BRITISH MUSIC ~ イギリスの音楽事情2011
BRITISH MUSIC ~ The music market situation in the UK 2011
毎年楽しみにしているイベントがコレ『BRITISH MUSIC BPI/MPA/UKT1 Japan Trade Mission 2011 』。いつもは8月の暑い最中に開催されるが、今年は10月にズラして開催された。
イギリスから新進の音楽レーベルのスタッフが大挙して来日し、抱える未契約のUKアーティストを日本のCD会社の担当者の前でDVDを使ってプレゼンする。つまり、日本のCD会社との出会いの機会を創出する。ま、言ってみれば音楽業界版『フィーリング・カップル20 vs.50』だ(今の若い人は知らないか…プロポーズ大作戦)。
その橋渡しをする主催者はイギリス大使館。イギリス音楽の愛好家にとってはUKミュージックの現状を知る絶好の機会といえそうだが、残念ながら招待者のみ入場が許されている。
司会はイギリス大使館の担当者。会場は新しい可能性を秘めたUKアーティストを発掘しようとする日本のCD会社のスタッフで満員だ。
もちろんマーシャルはCD会社ではないので、このイベントからアーティストを発掘することはない。せいぜいマーシャルを使っている新しいアーティストまたは未発掘のアーティストがどれぐらいいるのかな?と程度。では、ナゼこのイベントを楽しみにして毎年参加させていただいているのかというと…コレだ、1、2、3。
「UKの音楽市場に関するプレゼンテーション」
もうコレがたまらなく好き!イギリスの今の音楽業界についてのレポートを聴くのが最高に興味深いのだ。
壇上に立つのはBPI(British Phonographic Industry:英国レコード産業協会)のジュリアン・ウォール氏。いつか10ccのコンサートでご一緒させていただいた。
何せこちとらビートルズから始まって、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、ジェスロ・タル、キング・クリムゾン…と枚挙にいとまがないが、ブリティッシュ・ロックにはとことんお世話になったクチだ。ブリティッシュ・ロックなしにはこの人生考えられねぇ。今でもグレイシャスだとか、ジョーンジーとか、おもしろそうなのを見つけては買い込んできて楽しんでいる(大抵1回しか聴かないようなシロモノが多いけど…)。
でもパンクやらニュー・ウェイヴのムーブメント以降すっかり弱体化してしまった(私には少なくともそう見える)ブリティッシュ・ロックには失望しっぱなし。特にギターヒーローが不在なのが一番気にかかる。しかし、ダークネスやアンサーみたいなバンドが出てはこないかと大英帝国の音楽シーンにはいつも期待しているのだ。だからこのプレゼンによって真のイギリスの音楽業界の姿を耳にするのが楽しみなのだ。
そういえば、今もしかして「ブリティッシュ・ロック」って死語なのかしらん?若い方々はどうもイギリスのロックを「UKロック」と呼んでいるみたいだね。話しを聞くと「ユーケー」の方が「ブリティッシュ」より言いやすいから…とか。何か重みがないナァ…ゆ~け~。片やブリティッシュ…いかにも剛健な感じがしてよくない?イヤ、実際にいかにもトリヴィアルな軽い音楽になっちゃったんだよね、ブリティッシュ・ロック!「名は体を表す」からね。我々の間で「UK」といえばエディ・ジョブソン、ジョン・ウェットン…オット、どうでもいいか?
イギリスの音楽の情報に加えて、我々フィジカル・プロダクト族の敵、「音楽配信」の状況を恐る恐る聞くのも、音楽がどっれだけ破滅に向かっているかを計り知るのに興味深い。
クリエイティブ産業(創造産業:芸術、映画、ゲーム、広告、服飾デザイン等、知的財産権を持つ商品を生産する産業)はイギリスの経済にとってとても価値のある資産だという。ま、そうでしょうな。それに関わる会社は18万2千社に及び雇用者数は230万人に達する。その中でも音楽の存在はとても無視できないもので、輸出も盛んなのは誰もが認めるところだろう。その昔はビートルズがMBE勲章(Member of British Empire:過去にジム・マーシャルも受賞している)を授けられて世界的に大きなニュースにもなった。
その証拠にレコーディングされた音楽の輸出売上で、世界レベルでは何とイギリスは12%ものシェアを保有しているのである。通常の輸出品は3%だ。これを見てもいかにイギリスの音楽の世界的ポテンシャルが高いかがわかるだろう。個人的に気になるのは、果たしてこのうちどれぐらいの割合をビートルズが占めるのだろうということなんだけどね。
2010年のイギリスのレコーディング音楽の収入は前年に比べ11.3%減収となった。そのうちパッケージ商品は約20%のダウン。一方、配信による売上は反対に20%アップし、全売上の27%を占めるに至った。約3割が配信ということだね。アメリカよりは低いが日本のそれよりは比率が高い。
やはりこのデジタル配信事業は(残念ながら)順調に成長しており、5億曲以上のシングル、5千万枚以上のUKのアルバムがダウンロードされたという。
しかし、このダウンロードも大きな悩みを抱えている。というのは違法なダウンロードが引きも切らないというのだ。何しろデジタル・バージョンで入手された全曲のうち3分の1が違法にダウンロードされているというんだぜ!こんなんでいいの?
音楽を売ることを生業としているのがミュージシャンだ。ライブだグッズだと騒いでも音楽家の本来の職業は音楽という商品を売ることでしょう。その音楽を目に見える形で商品化したのがレコードであったりCDであったりするワケですよね。それが売ったり買ったりされずに、目に見えないデータという商品のやり取りとなって、それが違法に執り行われている。要するに商品が盗まれちゃっている。
著作権使用料がどうだの、知的財産権がどうだのと騒いでみても、知的財産のカタマリである最先端の科学技術によって、著作権というもうひとつの知的財産が大きく侵害されているのだ。いつの時代もソフトはハードの犠牲になるのが運命なのですね。
それともうひとつ…これは著名な音楽家も新聞で意見を寄せていたことだが、コンピューターによる音楽制作が容易になり、誰でも机の上で自分の音楽をクリエイトできるようになり、しかも、配信という技術を用いて不特定多数のリスナーにその音を届けることができるようになった。素晴らしいことじゃないの!…と思うのはまったく早計で、この一連の流れは音楽の質を著しく低下させるというのだ。音楽の幼稚化だね。要するにCDという形にして売ったり、買ったりする価値のある音楽が極端に減ってしまったことは明らかだろう。
こうした状況を鑑みると、本当にいい音楽を作ろうとしている本当のミュージシャンが一番バカを見るということになろうか。
さて、こうしてパッケージ商品、あるいはフィジカル・プロダクツはハードとソフトの両面から揺さぶられ瓦解への一途をたどっているのですよ。iPodの発明は大量の音楽データを携行できるという面では素晴らしい発明だと思うけど、偉大なる故ジョブス氏はこの音楽性の低下というプログラムまであらかじめ読み込んでいたのかな?ある程度は読んでいたかもしれないが、そのプログラムはかなりバージョンが低かったに違いない。もう一回記すが、いつの時代もソフトはハードの犠牲になるのが常なのだ。
今回は新企画が登場。参加したイギリスのレーベルの担当者によるパネル・ディスカッションだ。
「日本の音楽はイギリスに受け入れられると思うか?」などの質問が日本サイドから投げかけられてパネラーは真摯に受け答えをしていた。因みに答えはYes。言葉の問題はあるかもしれないが、いいものでありさえすればイギリス人は必ずそれを受け入れるとして、ある日本の人気バンドの名前をひとつ挙げていた。誰かって? ヒントはボーカル&ギターの人がマーシャルを使っている4人編成のバンド。
もう少しイギリスの音楽配信の事情を…2010年、配信によるアルバムの販売数は2000万枚を突破。マーケットの18%を占め、シングルに至ってはパッケージが出ない曲も散見され、2010年のトップ10のうち4曲が配信のみの販売だったという。何しろシングルの売上の98.7%が配信だというのだ。
やはりインディーズの活躍はめざましく、2010年はアルバムで18%、シングルで16%のシェアをマーケットで獲得したという。人気を得たバンドはThe XX、Vampire Weekend、Katie Melua、The Temper Trapなど…全然知らんな。Adeleなんて女性歌手は『21』というアルバムがマルチ・ミリオンなんだって。
今年、2011年の状況は、パッケージ商品の販売苦戦は続いており、1~6月で配信収入は前年の20%アップとなており、全英音楽市場のシェアの44%にまで増加しているという。
会場でいっしょになった日本の大手CD会社の友人からお話しをうかがった。「配信だのパッケージだの選り好みをしていられないのが日本の音楽業界の現状だと思います。とにかく広く音楽を聴いてもらわないとどうにもなりません!」
問題はもっと手前にありそうだね。だから、「さくら」やら「がんばれ」、「負けないで」と陳腐な「ありがとう」はもう本当に止めたら?そういえば由紀さおりのアルバムがアメリカで人気なんだってネェ。あの当時の日本の歌謡曲やアニメの主題歌はズバ抜けてクォリティが高く、オリジナリティがあったからね。やっぱり歌謡曲とロックは分けるべきだ。そして、どちらともつかないバンドさんにはご隠居願ったらいかがでしょうか?
楽器はどうしたらいい?優れた音楽なくして絶対に楽器の普及はありえないよ。
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(一部敬称略 2011年10月4日撮影)
























