ロンドン・ロック名所めぐり vol.17~ブリティッシュ・ロックを支えた弦<後編>
今回もSEVENOAKSのROTOSOUNDの工場レポートです。
工場の近くのパブ。ロンドンの街中のパブとは異なり、こういった郊外のパブは普通のレストランとまったくかわりありません。
急にジャンジャン降り出した雨もサッサと止んで晴れ間が出てきました。これまた夕方になると一雨くるのでしょう。伝統の英国式天気!
ロトサウンドの工場です。
こちらは巻き弦を作っているところ。
ロトサウンドは世界で最初にベース用のラウンド・ワウンド(丸巻き)弦を開発した弦のメーカーです。
巻き上がった弦を滑らかにするために用いられる紙やすり。
コントラバス用の弦を作っているところ。
このセクションは手作業で進められるため、生産量も多くはありません。
芯線の張り具合が品質の良し悪しを左右します。
この他にも様々な機械を用いて製品を生産していますが、企業秘密のセクションも多く写真はNG。
私も1本ギターの六弦(E弦)を作らせてもらいましたが、やはり芯線のテンションが適切でないために巻きがゆるくなりうまくいきませんでした。
ここは出来上がった弦をパッケージングしているセクション。全員女性です。
これがまたおっそろしいスピード!アットいう間にクルクルと弦を巻いて紙の袋にスポッと収めてしまう。あざやかです。
商品の倉庫です。弦は生物ですので保管環境も大切です。
誇り高き「大英帝国謹製」の印。ここから世界に向けて出荷されるのです。
後はお楽しみコーナー。実はこの辺りが昨日今日のハイライトだったりして!
現在のロトサウンドの会長、ジェイソン・ハウは先代の社長にして創設者ジェイムスの息子さん。先代は大層マメな方で創業当時からの製品や宣伝活動の記録をキチッと保管していたのです。下はそのミニ博物館。
ジェイムスはイギリス映画『第三の男』でアントン・カラスが弾く「ハリー・ライムのテーマ」のツィターに魅せられツィターの弦を生産しはじめました。映画だけでなく主題歌の「ハリー・ライムのテーマ」も世界的に大ヒットしましたが、ツィターという楽器はヤケクソに弾くのが難しいため楽器自体は普及しませんでした。そのことがロトサウンドの方向性を変えたのです。それで思い出にこのツィターが飾ってあるというワケ。
昔の商品たち。こういう昔のデザインっていいですよね。ナンカ神保町あたりに昔からあるコーヒーのうまい喫茶店のマッチみたい。とりわけ60年代前半はスウィンギン・ロンドンの真っ只中でカーナビー・ストリートが世界のファッションの中心にもなった頃です。こうしたデザインがイカしていたのも当然のことなのかもしれません。
さぁて、ここからがロトサウンドの真骨頂。
ジェイムス・ハウはアーティスト・リレーションの拡大に多大な力を注ぎました。膨大な数のブリティッシュ・ロック・アーティストに接しロトサウンドの優位性を説いたのです。
この写真は社長室に飾ってあったものの一部。他にも色々と飾ってありましたが、1枚だけ個人的な趣味で掲載します。The Moveです。天才・ロイ・ウッド(右端)、カッコいい!
そして、マメなジェイムスのこと、雑誌に掲載した広告をほとんどすべてスクラップしていたのです。以下はそのスクラップの一部。アーティスト名が入っているものにつき、ジェイソンに頼んで後からメールしてもらいました。NME(New Musical Express:世界的な影響を誇る1952年創刊の老舗音楽雑誌)誌の三行広告(?)。
「こういうアーティストが使っています!」というエラク直截的な広告です。
もう名前を見るだけでうれしいイギリスの名バンドが目白押しです。ザ・フー、ムーディ・ブルース…ジャスティン・ヘイワードが使っていたみたいですね、ザ・ムーヴ。
ところで、The Whoの『The Who Sell Out』っていう1967年のアルバムがあるでしょ?このアルバムは架空のラジオ放送という仕立てになっていて、曲間にCMが入るんだけど、6曲目の「Our Love Was」という曲の直後にはナント、ロトのコマーシャルが出てくるんです!ほんの1、2秒なんだけど、CM丸出しのメロディに乗って「Hold your groove together, ROTOSOUND STRING!」と歌われます。スゴイ!
先日、ビリー・シーンに会った時(ビリーはロトサウンドのエンドーサーでシグネイチャー弦も発売しています)これ知っているかどうか尋ねたところ「もちろん知ってるサ!」といってこのCMのメロディを完璧に歌ってくれました。サスガ!
そのロトの直前のCMはオックスフォードストリートにあった「Speakeasy」という有名なクラブも登場するのです。(Speakeasyについては別の回で詳しく紹介します)
YESはクリス・スクワイア。ELPは当然グレッグ・レイク。そういえば思い出した!昔々、ELPを「エルプ」と発音するかどうかという論争があって、「エルプ」はないんじゃないか?あまりにもカッコ悪いし軽いよね!という意見が多かったんだけど、8月にレポートしたHigh Voltageの時、マーシャルのダニー・トーマスがバックステージで小声でこう言ったのを私は聞き逃さなかった「さぁて、エルプでも見に行くか…」 。イギリス人は「エルプ」って言うんですね。これで「エルプ」論争は30年以上の時空を超えてひとりだけで勝手に終焉を迎えたのであります。
ここはスゴイ!ウジャウジャ出てくるよ!ウィッシュボーン・アッシュにスティーライスパン。マンフレッド・マンズ・アース・バンドなんてうれしいね!MOVEがELOに変わってる。エルトン・ジョン・グループはデイヴィー・ジョンストンかな?ディー・マレイかな?T.REXの名前も見える。
こんな調子でスクラップが延々と続くんです。見ていてメッチャおもしろい!興奮すること間違いなし!
ロキシーまで出てきた!ロキシーはベーシストが基本的にいなかったのでこれはフィル・マンザネラが使っていたことを意味するのかしらん?
ディープ・パープルはロジャー・グローバーでしょうなぁ。ジェイソンから送られてきたこれらの写真の中には見当たらなかったけど、ユーザー名の中に個人的にうれしい名前をみつけました。
それはテリー・スミス。イギリスのブラス・ロックバンド、IFのオリジナル・メンバー。この人は完全にジャズの人で、IF でのレコーディングでは目立ったプレイを残さなかったけど、ソロアルバムはとてもいいです。ビッグ・バンドと共演している『Fall Out』は特に素晴らしい。オススメです。ジェイソンにこのあたりの話しをしたら大層驚いていました。「何で日本人がテリー・スミスなんて知ってんの?」って。 タマタマです。
それはさておき、やはりこうして見てみると冒頭に述べた通り「ブリティッシュ・ロックを支えた弦」ということが言えるのではないでしょうか?
と楽しい一日もこれで終わり。SEVENOAKSの駅から電車でロンドンへ帰ります。
こういう電車のホームの風景は日本とまったく同じで(日本がマネしたんだけど)おおよそ外国へ来ている感じがありませんな。
(スクラップの写真提供:Jason Howロトサウンド会長 Cheers, Jason!!)
つづく

































