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2011年4月21日 (木)

菊地成孔+大村孝佳~ 同一の呪法による二つの儀式

Naruyoshi Kikuchi + Takayoshi Ohmura ~ Two ceremonies in the same way of curse

『菊地成孔 同一の呪法による二つの儀式 ~菊地成孔と菊地成孔によるダブルコンサート~ 巨星ジークフェルド/菊地成孔ダブルコンサート 二日目』のライブ・レポート。

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私にとって待ちに待ったコンサートだ。

ある日、大村孝佳くんから連絡があって、「菊地成孔さんのDCPRG(デートコース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデン)でギターを弾く」という言葉が耳に入って来た。

「!」

「ビッグ・バンド的ジャズ+ギター」とお題を頂戴した途端、ナゼか頭の中が勝手に、しかも極めて自動的に、そして完全に水野修孝さんの『Jazz Orchestra '73』と『Jazz Orchestra '75』(ともにギターは渡辺香津美。膨大な香津美さんの演奏記録の中でも私的に最も好きなうちのひとつ)になってしまった。イヤハヤ、後になって人間のイメージというものは恐ろしく自由というか、勝手なもんだと思い知った次第。菊地さんの音楽は全くそれとは異なる独自の世界なのだから。そこに我らが大村孝佳がジョインするというのでもうメッチャ楽しみにしてたというワケ。

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これが当日孝佳くんが使用した2203KKMF280Aのセット。

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最近はシチュエーションによって今日のパターンと「JVM410H1960」のコンビネーションとを使い分けている。

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さて、本番。

冒頭、満員の観客を前に菊地さんのMCが入る。菊地さんがコンサートで前説を加えるのは珍しいとのこと。

シェエラザードやシンドバッドでおなじみの『千夜一夜物語』から一話を抜粋する。軽妙洒脱な語り口にこれから始まるパフォーマンスへの期待が否が応でも高まるというものだ。

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そして、いよいよ演奏がスタートする。

ベースのイントロに導かれて、ドラム×2、パーカッションというリズム隊が4匹の大蛇のように絡み合い、のたうち回り複雑なポリリズムをクリエイトする。

観客はすでに総立ちだ!

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演奏はすべて菊地さんの指示に沿って展開していく。

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次から次へとキューが送り出され、局面がクルクルと変化していくのだ。

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その菊地さんが全幅の信頼を置き、その音宇宙を具現化するDCPRGのメンバーたちは…

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トランペット:類家(るいけ)心平

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アルト&ソプラノ・サックス:津上研太

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テナー&ソプラノ・サックス:高井汐人

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キーボード:丈青(じょうせい)

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キーボード:坪口昌恭

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ベース:アリガス

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ドラム(後方):田中教順

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ドラム:千住宗臣

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パーカッション:大儀見元(おおぎみげん)

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そして大村孝佳!

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菊地さん自身も指揮だけでなくオルガンとCDJを演奏する。

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このバンドはストレート・アヘッドなジャズを演奏するワケではないが、こうしたジャズ・フレイバーたっぷりのマッシブなバンドにギターが加わるというフォーマットが大好きなんですよ。でもそういう作品が残念ながらあんまり見当たらないんだよね~。

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先の『Jazz Orchestra '73』と『Jazz Orchestra '75』は私の中の極北だが、元IFのイギリス人ギタリスト、Terry Smithの『Fall Out』なんかはかなり痛快。WesとJimmy Smithの『Dynamic Duo』ももちろん素晴らしいし、Louis Bellson Big Bandの『Dynamite!』はギターの出番はそう多くなくても充分楽しめる作品だ。Gil EvansのMonday Night OrchestraのHirumとか?それと、Ed Parelmoの『Plays the Music of Frank Zappa』なんかビッグ・バンドをバックにソリストとしてMike Sternが参加しちゃったりしてる。でもコレ仕上がりとしてはイマイチなんだよね~。いい素材は全部揃ってるのにナァ。

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そして…来た!キューが出た!孝佳くんのソロだ!

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何でも菊地さんからは「ザッパのバンドのスティーヴ・ヴァイみたいに弾いてよ!」という指示があったらしい。

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孝佳節炸裂!

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孝佳くんとの付き合いも長くなったが、こんな「光速の貴公子」を見たのは初めてだ。

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このバンドにおける自分の立ち位置を孝佳くんは完全に理解している。ものすごいフリーな枠の中にワイルドに自分を弾き出そうとする姿が至極感動的だった。

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マーシャルはマーシャルでこのシチュエーションで思いっきり主人をプッシュしているように見えるのが不思議だ。

アッパレな大村孝佳だ!

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実は私は菊地さんの大著、『憂鬱と官能を教えた学校(河出書房新社)』、そして『東京大学のアルバート・アイラー ―東大ジャズ講義録・歴史編(メディア総合研究所)』、さらに『東京大学のアルバート・アイラー ―東大ジャズ講義録・キーワード編(メディア総合研究所)』が好き。

最前者のバークリー理論の解説はヘタの横好きで一時期ジャズ理論書を読みあさったこともあったので比較的スンナリと読める(かじっただけで決してマスターはしていないんだけどね…)。豊富なレトリックに彩られたその語り口が最高に心地よいのだ。また、理論の合間合間に盛り込まれた枝葉末節の話しも実に興味深い。

他の2冊のうち特に『歴史編』は非常におもしろかった!音楽に対して普段から漠然と考えたり、想像したり、刹那的に思っていることをハッとする論理でまとめ上げてくれるところが私にとってはすこぶる痛快だ。

半藤一利さんの『昭和史』や『幕末史』、藤原正彦さんの『国家の品格』等、口述筆記本はたとえ上梓前に推敲が重ねられているにしても、その語り手の知性というか厚みが出て来て面白い。本もいいけど、もちろん菊地さんのナマの講義をいつか聴いてみたいと願っていることは言うまでもない。

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次々と出されるキューでますます音楽は頂点を目指して駆け上がっていく!

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こうした菊地さんのプレイ(?)を見ていて思い出したのはデューク・エリントンの言葉。「私の楽器はオーケストラである」。まさにバンドがひとつの楽器と化している。

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後半はもう完全にステージと客席が一体化していた。私は『Agharta』や『Pangaea』や『Dark Magus』を聴いてスポンティニアスに身体を揺さぶった経験はないため(でも『Jack Johnson』のA面は燃える!)、正直言うと踊りまくる客席が少々奇異な光景に映ったが、音楽の楽しみ方は千差万別、人それぞれだ。

フランク・ザッパは幼い頃、絵画は音楽を表す手段だと思っていたという。つまり、絵が譜面だと思っていたというのだ。後年、ひとつの絵を複数のミュージシャンに見せて、その感じたイメージを演奏させたところ各人あまりにも違う演奏をしたのでガッカリしたという。

こうして見るとザッパが「Black Page」でお客さんを踊らせていたのはギャグでも冗談でもなく、そうした人が音楽に対して持つ反応を楽しみつつ確かめていたのではないか?

そして、菊地さんも一部ではそんなことを考えて音楽を奏でるているのではないか?と帰り道にひとりごちた。

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菊地成孔の詳しい情報はコチラ⇒PELISSE

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(一部敬称略 2011年2月20日 新宿文化センターにて撮影)