Kelly SIMONZ's BLIND FAITH Live in Tokyo
昨年末に開催されたKelly SIMONZのインストア・イベントを取材して以来楽しみにしていたKelly SIMONZのライブ。早くもそのステージに接するチャンスがめぐって来た!
1月15日、場所は東京鶯谷の東京キネマ倶楽部。雰囲気満点、創作意欲燃えさかるアーティストを迎えるに最適のシチュエーションではないか!
冒頭にはKellyの教え子、史(ふひと)くんがオープニングアクトとして登場。
JCM2000 TSL100を使用した図太いサウンドに乗って信じられないような高等テクニックが繰り出されてくる。ナントまだ17歳!
彼は師匠のアレンジしたベートーベンのピアノソナタ「悲愴」と奇しくもGary Mooreの「The Prophet」と「The Loner」を演奏。この日から20日ちょっとでGary Mooreが天に召そうなどと一体誰がこの時想像したであろうか…。
Garyが残した「ギター魂」を史くんのような若者たちが継承し、さらに次の世代に伝承していってくれることを願って止まない。
さて、ステージにはフルスタックが7セット!Kellyはこれをステージの「デザインの一部」と呼んでくれている。要するにこれがなくては始まらないのだ。
この発言はまさにイングヴェイ。
ご本人は「イングヴェイがどうの…」といわれるのはもウンザリしているだろうが、私は「速弾きがどうの」とか「ピッキングがどうの」とかは言わんグヴェイ。共通の「ロック魂」を胸に秘めるアーティストとして2人を結び付けているのだ。
イングヴェイとKellyと左官屋は壁がないと仕事にならんのだ!
それにしてもこの凛々しい姿。つくづく不思議だよねェ、こんな四角くて黒いだけの箱がカッコよく見えるんだから…。しつこく言うけど、こうして並べてカッコいいのはマーシャルとウルトラ兄弟ぐらい。他のアンプじゃこうはいかない。ますますもって不思議だ…。
Kelly SIMONZ's BLIND FATHの足跡を紹介する映像に続き、いよいよショウがスタートした!
息せき切って破砕流のように迫り来る高速フレーズ!
初っ端っからアクセルもスロットルも全開だ~!
そしてこの音!
キャビネットの中に猛犬が何匹も入り込んだようだ。ボケッとしてると噛みつかれるッ!
これがこの日使用した1959。普段はアメリカ時代から愛用している60年代製の1987を使用しているが、この日は会場の環境を考慮して1959とJTM45を用意。実際に試したところ、1959の方がピッキングについてくる点で優れた印象が残り、こちらを使用することにした。リンクしてボリュームはほぼ全開。アッテネーターを組み込んで少しだけ音量を絞っている。
足元のようす。至ってシンプルだ。
オワッと!さっそく弦が切れるハプニング発生!しかし、Kelly全く動じず。もしかして弦が切れたことも気がつかないで弾いていたのでは?弦がなくても音が出てたりして…つまり彼は現代のニコロ・パガニーニ?
Kelly SIMONZを支えるBLIND FAITHのリズム陣。
ベースの西本圭介。
ドラムは星山哲也。
ふたりとも技量は満点。数々のステージをともにこなしてきた信頼のおけるKellyの片腕…イヤ両腕だ!
歌ってこれだけギターを弾くのだからBLIND FAITHが完全にKellyフィーチャーの「Kelly+バックバンド」かというとまったくそうではない。
BLIND FAITHがKelly SIMONZの音楽をKelly自身とともにクリエイトするユニットだと感じた。
BLIND FAITHの見どころ、聴きどころはまだある。Kellyが情感タップリに歌い上げる姿もまたドラマチックなのだ。
しかし、「ギター」も「歌」もKellyにとっては大差ないのであろう。
そうKellyにとっては「歌う」ことは「ギターを弾くこと」であり、「ギターを弾くこと」は「歌う」ことなのである。
歌のうまい人は楽器がすぐうまくなるという。美空ひばりやエラ・フィッツジェラルドにストラトと1959を渡していれば今のギター界の構図は違うものになっていたかもしれない?!…んなコトはないか。
後半直前にはオケをバックにクラシックの名曲をプレイ。『超絶ギタリスト養成ギプス 孤高のクラシック名曲編』という練習曲集を著している。この日は氏が本の中でやりたかったというヴィヴァルディの『四季』とエルガーの『威風堂々』を披露。ここも大きな見せ場となったことは言うまでもない。
ところで、ウリにしてもイングヴェイにしてもクラシックネタを取り入れる超絶ギタリストは枚挙にいとまがない。楽器の音域特性ゆえか、そのチョイスはヴァイオリン系の曲が多いように見受けられる。
そこでだ、こんなネタはどうだろう?と提案したいのはラロの『スペイン交響曲』、またはラヴェルの『ヴァイオリン・ソナタ』。
この曲はラヴェル自身とイェフディ・メニューインの師匠ジョルジュ・エネスコ(エネスク)によって初演されたが、メニューインはエネスコが初めてこの曲のスコアをラヴェルから手渡された時に立ち会っており、エネスコは初見で(当然か)ラヴェルのピアノに合わせてスコアを見ながらサラッと一度弾き、二度目は譜面をまったく見ずに完璧にシレっと最後まで、そして一回目よりはるかに感動的に弾いて見せたとメニューインは回想している。マジでスゴクね?
私が気になっているのは、このソナタの第2楽章の『ブルース』の旋律がガーシュインの『ポーギーとベス』の「サマータイム」に似ているということ。はじめラヴェルがガーシュインの影響を受けているのかと思っていた。クラシックの作曲家もジャズに接近していたことがあったからね。ところが調べてみるとラヴェルはこの曲を1922~1927年に書いたとされていて、一方、『ポーギーとベス』の初演が1935年。つまり、ラヴェルの方がはるかに以前だったのだ。ジョージは果たしてこのヴァイオリン・ソナタのことを知っていたのだろうか?ま、そのメロディが果たして似通っているかどうかは聴く人の感性によるものなんだろうけど…。
この路線にはまだアイデアがあって、ヴァイオリン曲ではないけれど、ショスタコーヴィチの『ジャズ組曲』の「ワルツ2」。いわゆるジンタだ。スパルタカスもアレックスもHALもジャック・トランスもビックリの名曲だ。優雅で物悲しくて…案外ギターに向くんじゃないかと…チト浅草っぽいか?
さらにシューベルトの『死と乙女』。この弦カルは絶対にカッコいいよ。ドラキュラもマクベスもジェイク・ギテスもシュピルマンもドッキリの名曲じゃん?マイナーな主題がメジャーになってゴチョゴチョかき回してからまた絶望的なマイナーのメロデイに戻るところがかなりロック!ドライブしてる!
実はまだまだロック化してしかるべきクラシックの曲ってあると思ってんのね。オネゲルとかバルトークとか…。誰かジャンジャン取り組んでもらえないかナァ~。ELPがヤナーチェクやったみたいに。
それはKellyがもっとも気にかけているベンド(チョーキング)とビブラートに全霊を傾けたかのような凄まじい演奏だった。
個人的にブッ飛んだのは中盤で演奏された「Rondo Ksv007」だ。三位一体となった超絶技巧の応酬に息を飲んだ。こういう音楽を絶対に忘れてはならない。人並み外れた鍛錬を積み重ねることによって初めて到達できる音楽的身体能力の限界を超えた演奏とでも言おうか。これもひとつの音楽の感動なのだ。
そしてガラっとかわって「Rondo Ksv007」の次には「Little Wing」が用意されていた。驚くようなアレンジが施されたわけではないが、メロディの弾き方、特にピッキングがKelly流ですごく新鮮に聴こえた。
思い残すことなく怒涛の後半戦に突入!
サポート陣も一寸のスキすら見せない渾身のプレイが続く。
長尺のドラムソロも披露された。
ドップリと歌いこむ曲もしっかりと用意されている。こうした緩急自在な演出で聴衆を惹きつけるのがBLIND FAITHのステージだ。
…とあっという間に本編最後の「Fly Away」を迎えてしまった。
そしてアンコール。おそろいのTシャツに着替えて雰囲気はリラックス…と思いきや最後の最後までフルスロットル状態は続くのであった。
最後の追い込み!
たくさん弾いたし、たくさん歌った。しかし、Kellyがこの日この場に残そうとしたものは煙が出るようなテクニカルな速弾きでもなければ、空間を切り裂くハイトーン・ボイスでもない。Kellyは「音楽への情熱」を発散させ聴衆に伝えたのだと思う。その情熱の一部をマーシャルが演出しているのかと思うと感無量だ。
燃え尽きた3人。もう次のライブも決定しているようだ。
今回見逃したギターファン、メタルファンは次回見逃すべからず。
こちらはKelly著によるベストセラー教則本(リットーミュージック刊)。好評発売中だ。
Kelly SIMONZの詳しい情報はコチラ⇒Kelly SIMONZ's ++Words of Soul++
最後にこの日収録された動画をいくつか紹介しよう。ナニ?ゴタゴタ言ってないでこれを最初から見せればいいって?イイエ、前座があるからこそ本編が輝くの!ゆっくりご覧あれ!
クラシック・ネタはこちら…。
(一部敬称略 2011年1月15日 東京キネマ倶楽部にて撮影)



































