Eddie Jobson(エディ・ジョブソン) "Z3" 2010~プログレッシヴ・ロックの芳しき香り!
Prog rock forever!!
ひさびさに思いっきりウンチクでスタート!
生来ヴァイオリンという楽器が好きだ。
とはいってもクラシックになるととんでもなく偏った聴き方しかできないので、もっぱらジャズかロックだ。
ジャズについては、第一線で活躍する親友のプロのジャズ・サキソフォニストと「ヴァイオリン・ジャズの是非について」激論を交わしたことがあった。彼曰く「最終的にはヴァイオリンという楽器はジャズに向いていない」だった。フィアンセがヴァイオリニストであるにもかかわらず、キッパリと言い放つ姿には厳しいジャズ愛好者としての確固たる思いを感じた。(あの後、ふたりで飲みすぎて私はイスのひじ掛けに横っ腹を当ててあばら骨にヒビをいれてしまったっけ…アレものすごい痛いッスね~)
でも、ジャズ・ヴァイオリンは素敵ですよ。ステファン・グラッペリに始まって、ジャン・リュック・ポンティ、ジェリー・グッドマン、スタッフ・スミス、レイ・ナンス、エレク・バクシックとかみんなカッコいい。ちょっと毛色の変わったところではポーランドのマイケル・ウルバニアクとかインドのLシャンカールとかね。私は擁護派だ。
クラシックがらみではグラッペリとユーディ・メニューインが一緒に演ってるやつとか、イツァーク・パールマンとオスカー・ピーターソンの盤も好き。
ラヴェルの「ヴァイオリン・ソナタ」とかショスタコーヴィチの「ヴァイオリン協奏曲第1番&第2番」なんてマジでカッコいい…。
ロックのヴァイオリンときたらもうタマランね。プログレ大好きだから。
ヴァイオリニストが入っている(いた)バンドですぐに思い浮かぶのは、やっぱりキング・クリムゾン、カーヴド・エア、ウルフ、キャラバン(ビオラ)、イースト・オブ・エデン、ジェントル・ジャイアント、ELOもそうか。そして、ロキシー・ミュージック、コックニー・レベル…。
イギリス勢が強い。
イギリスを代表するロック・ヴァイオリニストのひとりはダリル・ウェイでしょう。彼のバンド、ウルフにはジョン・エサーリッジという凄腕ギタリストがいて好きだった。かれは『Ash』というソロ・アルバムを出していて「イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ」とか「エイティ・ワン」やら「インファント・アイズ」、「リトル・ウィング」まで演っててなかなかに面白い。そして、ある日スゴイのを見つけた。エサーリッジがザッパの曲を演ってるリーズでのライブで『Zappatistas』っての。でもこれは期待したほどではなくて悲しかった。
PFMをはじめとしたイタリア勢もお盛んだ。フリオ・キリコ率いるアルティ・エ・メスティエリは別格として、クエラ・ベッキア・ロカンダとかね。
アメリカ勢はどうなんだろう?フランク・ザッパ(ジャン・リュック・ポンティだけじゃなしにシュガーケイン・ハリスも素晴らしい)、カンサス、チャーリー・ダニエルズ・バンドやらディキシー・ドレッグス(これはちょっと意味合いが違うか?)あたりか…。
他にはチェロの入ったスウェーデンのアネクドテン(これこのまま発音しても海外では通じません。スウェーデン人の友達のエリックによると、「アニクドウツゥン」みたいな(「ド」にアクセントです)。フランスではZAOにいたデディエ・ロックウッドとかね。マグマのライブにも参加してたけど実にカッコいい。(この人は完全にジャズの人か?何かリーダー・アルバム持ってるけど記憶に薄いな)。
アラン・ホールズワースはヴァイオリンもうまいんだよね。とてもギタリストの余技の範囲ではない。思えばあのテンペストというバンドは後任のギターのピーター・オリー・ハルソールも元々ヴィブラフォン・プレイヤーだったりする。ヴァイブがあんまり難しいんでギターに転向したというから驚きだ。あんなに凄まじいギター・テクニックを持っているのに!ヴァイブラフォンって一体どれだけ難しいのよ?!(今では未発表音源でヴァイブの演奏が聴けるが、なるほどギターの方が断然いい!)
どうにも止まらなくなりそうなので強引に本題に入ります。

今日の主役はもうひとりのイギリスを代表するヴァイオリニスト、エディ・ジョブソン。それともキーボード・プレイヤーかな?
初めて彼の演奏を聞いたのは渋谷陽一さんのラジオで、ロキシー・ミュージックのライブ『Viva(1976年)』の「アウト・オブ・ザ・ブルー」がかかった時だった。最後の部分のソロがカッコよくてすぐに好きになった。もちろん、『ストランデッド!』以降のロキシーのアルバムをすぐに揃えて過去へと遡った。「なるほど、カーヴド・エアというバンドで16歳の時にデビューしたのか…」ということを知って『Air Cut』をゲット。ヴァイオリンよりも彼のピアノが印象的だった。同時にカーヴド・エアも好きになってダリル・ウェイを知った。
ロキシーが解散してUKを結成した時は小躍りした。エディ・ジョブソンをはじめ、ジョン・ウェットンやビル・ブラッフォードなど大好きなミュージシャンたちでバンドを結成したのだから当然だ。
この後、ロキシーは『マニフェスト』を出して来日した。武道館へ観に行ったけど、なんか大味でおもしろくなかった。それよりも、ブライアン・フェリーがソロで来日した時の方がよかった。何しろギターはクリス・スペディング、ベースはジョン・ウェットン、アンディ・マッケイもポール・トンプソンも参加してた。
この時UK結成の時(1977年)、はじめてアラン・ホールズワースの名前を耳にした(このあたりのくだりは『藤岡幹大TRASH BOX~語り出したら止まらない!ホールズワースの思ひ出』参照)。
UKはホールズワースとブラッフォードが抜けて”Little Skinny Terry Ted Bozzio, the Cute Little Drummer”が加入してキーボード・トリオ編成となって「第2のELPか?!」なんて騒がれたものだった。
そして、1979年6月に来日。日本青年館での公演を観に行った。この時と中野サンプラザでの演奏を収録したのがライブ盤『Night After Night』だ。本当のことを言うと2枚目の『デンジャー・マネー』はポップであまり好きではなかった。でもコンサートはスゴかった。特にテリー・ボジオのソロが「壮絶」としかいいようのないものだった。人生3スゴドラムソロの一角だな。あとはジャック・ディジョネットと1977年に来た時のサンタナのドラマー(グラハム・リアーとかいうらしい)。
一番最近聴いたエディの音源は今年発掘発売となったフランク・ザッパの1976年のフィラデルフィアのライブ盤での「Black Napkins」 のヴァイオリン・ソロ。ザッパ時代のエディの目立った演奏がこれまでほとんど聴けなかったのでうれしかった…と思ったら来日でしょう。何たるタイミング!「UKZ」として30年ぶりの来日を果たし、今回はそれに続いて「Z3」として日本のファンの前に再びその雄姿を現した。
MCでエディが言うことには「このプロジェクトの目的は、プログレッシヴ・ロックやクラシカルなロックを演奏し、それを後世に伝えることにある」…っていいこと言うよね~!マーブロの目的の一部と一緒だわ!
こういうプロジェクトはどんどんやって欲しいね。本場イギリスでも一般的には「プログレッシブ・ロック(向こうではProg rockと呼びますが)は死んだ」といわれているようだが、ナンノナンノ、ヴァンダーグラフジェネレーターが再結成したりするし、マーブロではおなじみのCLASSIC ROCK MAGAZINEでは”PROG ROCK”なんて本を出してイエス、ピンク・フロイド、ジェネシス、ジェスロ・タルなどかを特集してる。またその本が駅の売店で売ってるんだからのけぞってしまう!やっぱり音楽の層の厚さが日本とは比べ物にならないね。
ヴァイオリン・ソロで始まったコンサート。エディの次に登場したのはビリー・シーン。次々とメンバーが出て来てソロを披露する。これこれ!これもプログレの醍醐味!みんな楽器がうまいからネェ~、腕前を思いっきり見せつけちゃう!
そうして全員揃ったところで演奏したのが「In the dead of the night」。アルバム『UK』から7/4のプログレらしい曲だ。あのベース・パターンをビリー・シーンが弾いているなんてメッチャ不思議!
ところで今回のメンバーは;
エディ・ジョブソン(key、vln)
マーク・ボニーラ(vo、g)
TJ・エルメリッヒ(g)
ビリー・シーン(b)
マルコ・ミネマン(ds)
マイク・マンジーニ(ds)
という面々。
ギターは2人ともJVM210Hと1960を使用していた。
意外にもELPの曲を挟んで飛び出したのが何とキング・クリムゾンの「スターレス」!
この限り無く美しいメロディ!クリムゾンのメロディって時折恐ろしく日本的だと思う。
かつてお茶の水の明治大学の記念館の向かいのレコード店がまだロックの商品を扱っていたころ、そこが世界一(!)『クリムゾン・キングの宮殿』を売る店だと聞いたことがあったがそれも頷ける。
坂本冬美のリバイバルヒット「また君に恋してる」の冒頭のメロディが「ムーンチャイルド」に聞こえるのは私だけだろうか?してみると、やっぱりクリムゾン・メロディは「日本の心」なんだねぇ。根強い人気があるのも当然か?
クリムゾンの初来日のコンサートを今はもうない浅草の国際劇場で観たが(1981年)、あのときは『ディシプリン』の曲が中心で「スターレス」なんか全然演ってくれなかった。もっともエイドリアン・ブリューの「スターレス」もどうかと思うがね…。マークの歌はいいな。
かつて佐久間正英さんがインタビューで「四人囃子は歌のバンドだった」みたいなことをおっしゃっていたが、そう、プログレは演奏技術が高いのは万人が認めるところだが、歌曲としての完成度も高いんだよね。そういえば四人囃子は上の浅草国際でフランク・ザッパの前座を務めていらっしゃる!
「アラスカ」が始まった。人生2回目の生アラスカだ。メロディはギターのTJが担当。この人、タッピングでじつにうまいことホールズワースの味を出すのねぇ。
「デンジャーマネー」も演奏。
2人のドラマーの長尺のソロ合戦は見ごたえがあった。マルコは絶対ザッパ・ファンでしょ?DVDかなんかでTシャツ着ているのをみたことあるもんね。今回もトリッキーな素晴らしいソロ!数年前にフランクフルトでマルコ、トーマス・ラング、ジョニー・ラブのドラム合戦を体験したが、あれもスゴかった。
それにしてもマイク・マンジーニの片手ロールはスゴイ!
やっぱり楽器がうまいってカッコいい。もっと若い人たちにみてもらいたいなぁ。
「シーザーズ・パレス・ブルース」で最高の盛り上がりを見せた後、”I think you know this”といって演奏した曲は「レッド」だった!ああ、思い出す。29年前の国際劇場でエイドリアン・ブリューはこの曲を「アカ!」と紹介して演奏したのだった。
やっぱりこういう演奏技術の粋を活かした音楽は観ていて面白い。それは決してむやみに速さや複雑さだけを競うのではなく、キチンとした音楽が下地にあって、それを表現するために使われる技術でなければならないと改めて感じた。
お客さんの年齢層は口が裂けても「若い」なんていえないけど、若い人たちにこそこういう音楽を聴いてもらいたいナァ。
きっと「カッコいい!」って言ってくれると思うし、楽器の経験がない人はチャレンジしたくなると思うよ。若い人たちがこういう音楽から遠ざかっているのは「古い」とか「つまらない」とかいうのではなくて、ただ知らないだけなのではないでしょうか?
イギリスでは上の雑誌のように連綿と続くブリティッシュ・ロックの偉大な財産を後世に伝えようという動きが(Z3のように)常にあるから、若い人たちや新しい世代の人たちもそういう音楽に触れる機会がある。でも、今の日本の音楽事情ではまったくと言っていいほど「知るチャンス」はない。
この自慢話だらけのつまらない長い文章に最後まで付き合ってくれたプログレ未経験の若人たちよ!是非、お試しあれ!
※文中、アルバムや人名等が英語表記とカタカナ表記で混在しておりますが、何ら規則性はありません。
(2010年7月4日 渋谷O-EASTにて撮影 ※写真提供 : Naoju Nakamura)
