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2010年1月15日 (金)

大谷令文、マーシャルを語る <後編>

弾いてみたいマーシャル
M:弾いてみたいマーシャルって何かあります?もし自由に古今東西のマーシャルが選べたら…。
R:ジミヘンがファーストで弾いたヤツ!(笑)誰か持ってんのかな~?
M:実際にジミヘンが使っていたマーシャルって工場に行った時に見せてもらったことがあります。ただのうす汚れた1959だった!でも、アンプの上面に「JH EXP」だったかな?白いステンシルが入っていたのがカッコよかったっていうか感動した。
Img_0950 R:さっきメイオールのバンドの持ち物って話があったけど、ソフト・マシーンの持ち物だったマーシャル!アラン・ホールズワースもジョン・エサーリッジも使ったマーシャル。
M:あの頃ジェフ・バーリンもマーシャルでしたもんね。ディ・メオラも。
R:そうだアル・ディ・メオラもそうだ。ソフト・マシーンのマーシャルは、ホールズワースのインタビューで読んだ記憶があるんだけど、『Bundles』のころのレコーディングはそのマーシャルで録ったって。
M:その後のホールワースは?ライフタイムの頃…。
R:やっぱりマーシャルだったみたい。少し新しいモデルだったらしいけど。UKもそう。ま、自分の持ち物ではなかったのかもしれないけど、あの頃はどこへ行ってもマーシャルだったからレコーディングも全部マーシャルになっちゃう。
M:ベースもね。
R:弾いてみたいなソフト・マシーンのバンドの持ち物だった50Wのマーシャル!(笑)絶対あんな音出ないな!マクラフリンもマーシャルだった。
M:そう!だから『Jack Johnson』や『Live Evil』もマーシャルで弾いていているのかと想像するとメチャうれしい!
R:絶対そうだよ!
M:「音デカイ!」ってマイルスに怒られたとかね!
R:そうやって考えるとジャズ/フュージョン系のプレイヤーもマーシャルが多かったよね。『Elegant Gypsy』の音なんか大好き。

マーシャルの素晴らしさ
M:ま、いまさらお訊きするのもナンですが、マーシャルの素晴らしさを言葉に表すと…?
R:レスポンスがピッキングに恐ろしく忠実ということ。左手についても弦がフレットをこする音まで表現してくれる。
M:でも他のブランドのアンプだってそうじゃない?
R:イヤ、こんな反応はない。なんかもっとオブラートに包まれた感じになっちゃう。そこへいくとマーシャルが出すのは一番ダイレクトな「素」の音がする。
M:なるほどね。
Img_0961 R:トーンもそう。ウォームな音からエッジが効いた音まで両極端な音が1本のギターで出せる。これがすごくいいことだと思う。僕はマーシャルって意外に器用なアンプだと思ってる。
M:マーシャルのクリーン・トーンってどう思います?
R:もう大好き!
M:マーシャルといえば「歪み」というイメージが定着しているけど…
R:違う違う!
M:…案外「マーシャルのクリーンが好き!」という人が多いんですよね。
R:ヘンドリックスだって「リトル・ウイング」なんか最高にビューティフルだし。
M:ウリが言ってましたが、実際のヘンドリックスの音ってメチャクチャ大きくてクリーンだったとか。
R:そうだろうな~。ポール・コゾフもそうだよね。ソロももちろん素晴らしいけど、コードワークの音。アレアンプに直だもんね。
M:ピーター・バラカンさんの本(『ピーター・バラカンのわが青春のサウンドトラック(ミュージック・マガジン社刊))』:マーブロでは別の機会にも登場しましたが、メチャクチャ面白い本です。超おススメ!)を読むと若いころはさしてうまくなかったとか…。でも、お金持ちだからいいギターをバンバン買えたらしくて。
R:うまくなかったって?!
3:子供の頃の写真を見るとジャズとか習ってそうだけど。お父さんは有名な俳優ですよね?
Dsc_6197 R:デヴィッド・コゾフ。
3:その写真を見ると七三に分けてレスポールとか箱物を持ってるんですよ。スゴイ高そうなヤツ。だから多分ジャズを習ってたんじゃないかと思った。
R:クラシック・ギターも習ってたらしい。
3:そうじゃないとあのコード・フォームはロックでは考えられない。
M:そういう話ってアメリカへ行って現地の人と話してもあまり盛り上がらないんですが、その点、イギリスは何度言っても非常にワクワクさせられます。マーシャルの連中と話をしていてもすごく盛り上がるんですね。それが生々しい!ビートルズを見ているおじいさんなんかは当たり前。
3:まさし(ロンドンで活躍中のブルース・ロック・ギタリスト。1962を愛用)が言ってたけど、ロンドンはせまーい世界にものすごくたくさんの人がひしめき合ってておもしろいって。

マーシャルに期待すること
M:これは令文さんには愚問かもしれませんが、今後マーシャルはどんな風になって行ってもらいたいですが?どんなことを期待しますか?1959の製造を続けろとか?
R:ああ、もうそれに尽きるね。(一同爆笑)リバーブが搭載されるともっとうれしいんだけどな~。

若い人たちへのメッセージ
M:若い方々にギターを弾くよろこびについて何かメッセージをいただけませんでしょうか?ギタリストにとって一番の見せどころであるはずのギター・ソロが最近はひどく疎遠になってしまいましたよね?
Img_0948 R:そうですよね。結局そういう楽曲を必要としていないということなんでしょうね。でもテレビなんかで流れているバンドものにはギター・ソロが必要じゃないかもしれないけど、もっとブルース寄りの音楽があったり、もっとフュージョン寄りの音楽があったりとか、いろんなジャンルの音楽が同時に存在しているのが当たり前の世界だから、もっと色々聴いて、他のジャンルの音楽を聴いてその要素を取り入れて自分たちの音楽に活かすということが大事なんじゃないかな?
M:そうですね。令文さんは本当に色々な音楽を聴いていらっしゃる。
R:ウン。僕はクラシック・ギターを聴くのも、ジャズ・ギターを聴くのも大好き。そして、ギターという楽器はメロディもコードも両方奏でることができて…しかも、ステージで走りまわりながら弾けるのもこの楽器のよさだし。
M:こんあ楽器めったにないですよね!
R:ないない!しかも。歌いながら弾けるし!(笑)

リズムは楽しい!
M:昔、ジャンゴ・ラインハルトに関する文章を読んでいて、「ギターを見たことのない人に「ホラ楽器だよ」といってギターを渡したら、一体その人はメロディを弾くか、リズムを刻むか?ジャンゴはリズムじゃないか?」なんてのがありました。
R:わかるわかる。でもソロがうまい人はリズム・ギターもたいていうまい。
M:こうして第一線のプロの方たちと接していていつも思うのはみなさん、本当にリズム感がスゴイなって。指が早く動くとかの前にみんなリズム感が素晴らしい。
R:リズムって楽しいものなんだよね。みんな「得意のリズム」っていうのを必ず持っていて、そDsc_6204 れを見つけられるかどうかっていうことが大事なんです。僕だったら三連系のシャッフルっぽいのが大好きで得意かもしれない。
M:確かに!「Razor Boogie」のイメージが強い!
R:(笑)三連は大好き。ところが若い人たちにギターを教えているとみんなシャッフル系が苦手。最近はあるように聞いたけど、考えてみるとここ何十年もの間シャッフル系のヒット曲ってなかったじゃないですか。だから若い人たちは聞いたことがほとんどなかったんじゃないかな?(♪シャッフル・リズムを刻みながら)こんなヒット曲ってないでしょ?
M:確かにそうですね。
R:僕はどうやって発見したのかな~?…たまたま得意なリズムを見つけられたからよかった。得意なリズムを見つけることがギターを練習を楽しくさせる秘訣かもしれない。
M:いつでもステイタス・クォーに入れますよ!
R:入りたい!
M:いまでも本国ではものスゴイ人気ですからね。白いマーシャル並べちゃって!
R:イギリス人ってシャッフル好きなんじゃない?ナザレスとか。(笑)

練習について
M:他に何かギターを練習している方々にメッセージはありませんか?
Dsc_6238 R:初めのうちはクリーンな音で練習するのがいいと思う。余計な歪みはない方がいい。
M:音量については?これも雑誌のインタビューで読んだのですが、ウリはなるべく小さい音Img_0949_2 で、一方エディはなるべく大きい音で練習すべきと意見が分かれていましたが…。
R:(大笑)それはあるよね!ま、ウリが言っているのは家でやる地味なスケール練習とかのことで、エディが言っているのはリフとかの練習ということでしょう。
3:イヤイヤ、音の大きさのスケールが欧米とかなり違うから参考にならないと思いますよ!(一同大笑)

造詣の深い人
M:今までずいぶんとたくさんのプロ・ギタリストの方とお話をさせていただきましたが、令文さんの 聴いている音楽の幅広さはその中でもトップ・クラスですね。フォルムラ・トレとか出てきた日にゃノケゾった!
R:プログレ好きですもん。友達から教わるのが多いんですよ。こないだもフィンランドの変なバンド見に行った。
M:何てバンド?
R:アラマーイルマン・ヴァサラット。チェロが2本入ってんの。
M:ウワ、見たかった!(後にインターネットで試聴しましたがメチャクチャかっこいい!令文さん、教えてくれてありがとう)
M:今日は色々と楽しいお話をありがとうございました。
R:いいえ、こちらこそ!

と割愛した部分も含めて脱線に脱線を重ねたインタビュー。楽しかった!色々な人と出会うことは色々な音楽と出会うことでもある。一度きりの人生、どうせなら色んな音楽を楽しんじゃおう!