とにかくたくさんの人に聴いて楽しんで欲しい島紀史のソロ・アルバム『FROM THE WOMB TO THE TOMB』。単なるギタリストのソロ・アルバムの枠をはるかに超えてコンチェルト・ムーンでは聴くことのできない島ミュージックの魅力がふんだんに盛り込まれています。もちろんマーシャルの魅力も満開!
ここでゴチャゴチャ言いません。そのかわり島さん自身にタップリとアルバムについての魅力を語ってもらいました。ロング・インタビューをお楽しみください。
まとまったアルバム
YMT(以下Y):まず最初に…アルバムとしてものすごくまとまっている印象を受けました。何と言うか、少し大げさに言うとスティーヴィー・ワンダーの「キー・オブ・ライフ」とか、フランク・ザッパで言えば「アンクル・ミート」みたいにいろいろなものが詰まっている割には散漫ではない…また、飽きないし、長くない。そのあたりを緻密に計算して作られたのではないですか?
島紀文(以下S):イエイエ、「計算」なんて…真逆でしたよ。
Y:ギタリストのソロ・アルバムというと、もうガチャガチャに弾きまくっているイメージが強いのが普通ですけど、それを故意に避けているのかな?とも思いました。だから、弾きまくりの曲の次にワザと日本語のバラードを持ってきたりしてるかな?とも思いました。普通はその曲調の違いがワザとらしかったりしますが、それがまったく感じられない。そこがこのアルバムのまとまっているという所以かなと感じました。何回も聴きました、というか聴けちゃうんです。
S:それを言ってもらえるとすごくうれしい!
Y:仲良くお付き合いさせていただいていますんで、調子に乗って「ノンちゃん、ノンちゃん」なんて呼んで今まで申し訳ありませんでした。これからは「マエストロ」と呼ばせていただきます!
S:(爆笑)
ソロ・アルバムでしかできないこと
Y:ということで、マエストロ(全員爆笑)。「弾きまくりアルバムにはならないように」という意識はあったんですか?
S:弾きまくり一辺倒というのはやりたいモノではなかったし、だからといってそれがないのも違うと思ったので、そういうスタンスの曲(弾きまくりの曲)は最後に収録したコンチェルト・ムーンでやっている曲のリメイクがあるので…あれは曲のテーマとしては「死に行く人」とか「死
を覚悟した人」とかのイメージで、それと対になるイメージ、つまり、「生きる意味を見出した」みたいなね…そういう曲を作って1曲目に持ってきて、最後の曲と関連づけたんです。その合間を自分のバックボーンにあるものを素直に出して行こうと考えたんです。それぞれ曲を作った時期はバラバラです。でも1曲目と最後の曲は双子みたいなもの。だからリズム・アレンジは似た感じにした。それで、他の曲は「生」と「死」の合間にある…ということをイメージして作りました。後は、バックボーンをさらけだして、バンドでやれない曲を選んだんです。
Y:バンドでやれない曲って?
S:「古臭くなりすぎかナァ?」って曲とか、バンドにはメンバーがいるのに自分しか演奏していないような静かな曲とか。だからそういうものを収録していこうと思った。いつもだとアルバムの趣旨とかテーマとか、「こんな作品にしよう」とかあらかじめ自分で決めちゃってレコード会社に「こんな作品にします」とか「こんな作品になります」と自分のイメージを伝えるんだけど、ソロ・アルバムというのは本来自分のイメージになかったものですから、つまり、レコード会社のすすめで作った部分もあるので担当の方に「歌入りの曲は何曲ぐらい入っていた方がいいですか?」とか「女性のボーカル曲を入れたいと思っているのですが全部女性がいいですか?」とか、そういうレコード会社のイメージも話し合いながら割合取り入れて決めたんです。
Y:ちょうどレコーディングに取り組んでいらっしゃる時期、昼間電話を入れても全然出られなかったでしょ?それほどこのアルバムづくりに没頭されていたんですね?今、理由がわかりましたよ。
S:ハハ、失礼しました!
島紀史製お子様ランチ
Y:イエイエ。ところで、さっきバックボーンっておっしゃいましたね?私はこのアルバムは島さんの「お子様ランチ」だと思ったんです。食べたいものがすべてお皿に乗ってる。
S:(大きくうなづいて)ええ!
Y:そもそもジャケットがいいじゃないですか?!これは誰のアイデアなんですか?
S:今までデザインを担当してくれたデザイナーの方なんですけど、いつも「こんな作品だからこういう風にしてくれ」ってイメージを伝えてたんですね。で、今回はソロ・アルバムなんでいつ
も通りにイメージを伝えてしまうといつもと変わり映えのしないものになってしまうから、「僕がソロを出すとしたらどんなデザインがいいと思いますか?」って逆に訊いてたんですよ。すると「一見はポップで明るそうなんだけど、よく見るとその明るさが『怖いもの』みたいにしたい」って言われたんですね。僕も「シュールな恐怖感」というのが嫌いではないので、よく見るとアダムだ、イヴだってなってるかと思う一方では骸骨が出ていたり…。「ゆりかごから墓場まで」というイメージだけは話しておいたので「ポップの中のそこはかな恐怖」ということを出して欲しかった。ま、一番強調したのはこういう機会なのでシルク・ハットをかぶらせてくれってお願いしました。
Y:スラッシュは関係ないですよね?
S:(即答)あ、リッチー・ブラックモアです。
Y:(私としたことがッ!ヘタこいた~!)ス、スミマセン!
S:裏ジャケはね、本当に牛の骸骨を持たされたんです。
Y:コレ、いいかげんデカイですよね!
S:そう、一応見えないように吊ってくれてたんですけど、重いもんだから手が段々プルプル震えてきちゃって!カメラマンに「ちょっと角度をつけて」なんて言われると吊っているのがまったく意味をなさず、もう手の力だけで持たなくちゃならなくて!(一同爆笑)
Y:それは重労働でしたね!
S:でもジャケットのことを褒めてもらうとすごくうれしい。結局「任せる」なんて言っておいても途中でナンダカンダ注文をつけちゃいました。もっとシュールな感じにしたいとか、色なんかも最初はもっと生っぽかったんですけど、コンストラストを強くかけてもらったり…。
Y:ああ、色合いも素敵ですね。
S:自分の顔がジャケットに載るなんてソロ・アルバム以外には考えられないし、1回やっとくかな~、と思いましてね。
Y:とても島さんには見えない…ということもあって好評ですよ!
S:(爆笑!)シルクハットのおかけですわ。
ゆりかごから墓場まで
Y:ところでさきほど「ゆりかごから墓場まで」とおっしゃいましたが、タイトルは『FROM THE WOMB TO THE TOMB(子宮から墓まで)』で少し異なりますよね。まして”womb”なんて単語は普通は即座に出ない言葉ですよね?
S:調べたんです。「ゆりかごから墓場まで」というのはイギリスの政策でしょ。これを英語でどういうかと言うと”From the Cradle to the Grave”なんですけど、昔の劇作家なんかはもっと詩的に韻を踏んでいる表現をしたんですそれが”From the womb to the Tomb(「生まれてから死ぬまで、一生」の意)”なんですね。
Y:いいタイトルですよね。
S:別に今すぐミュージシャンをやめたり、これを最後に引退するワケではないけど、コンチェルト・ムーンとして10周年の年にソロ・アルバムを出すので、「ノンちゃん反省記」的な、ギタリストとして誕生したこれまでの総括をしようと思ったんです。だからさっきの「お子様ランチ」という表現はすごくうれしいですね。自分が好きなもの…アコースティックもそうだし、歌謡曲っぽい歌ものもそうだし、いつもはメタルだけどレイドバックしたハードロックもそうだし、70年代っぽいサウンドもそうだし…。
Y:聴いているといつも島さんとおしゃべりしている時に出てくるミュージシャンの名前を彷彿とさせるんですね。それが自然なサウンドでイヤらしくない。
S:開き直るワケじゃないんですけど、これはソロ・アルバムでバンドの作品ではないので「ギタリスト」として受けた影響を露骨に出していいんじゃないかと考えたんです。ブラックモアであったり、ゲイリーやマルムスティーン、そしてウルリッヒであったりね。
Y:この録音は当然ウリの日本公演(2008年11月11&12日@中野サンプラザホール)より前ですよね。でも、このアルバムを聴いて猛烈に感じたのは島さんはウルリッヒ・ロートの影響が一番デカイんじゃないかと…。
S:それはものすごいほめ言葉ですよ!!
使用したマーシャル、VintageModernについて
Y:使用したマーシャルについてまずはざっとお聞きしたいのですが。
S:もうほとんどVintageModernですよ。M2「ABOSOLUTE TERROR」の片側のバッキングに1959を使いました。ちょっと変化をつけたかったんで。
Y:あのダウン・チューニングしたへヴィなリフはVintageModern?
S:VintageModernです。それとM10「TO DIE FOR ‘08」のバッキングの片側も1959。以外はフルにVintageModernです。それとファズ・ボックスをつないで録音しました。
Y:すごいなVintageModern。
S:ホントいいアンプですよ。それでM4「INTROJECTION」はギターもいつものより出力の小さいものに変えてVintageModernにダイレクトにつないでいます。
Y:道理でこの曲だけ音が違うなと思った。
S:だから95%がVintageModernになりますね。
Y:ポール・ギルバートの『UNITED STATES』と並んでVintageModernのいいショウケースになりました。
S:「あの音がイヤだ」なんて言われなきゃいいんですけど!(爆笑)
ハモリの秘密
Y:これからは1曲ずつ気になるところをお聞きしていきたいんですけど。というかただ単に自分が興味あるだけなんですけど!
S:そう言ってもらえるととてもうれしいですよ!
Y:ではM1「REASON TO LIVE」。のっけからものすごいハモリが出てきますよね?コレ、どうやって作っているんですか?手法として。はじめに主旋律を弾いてそれをコピーしてかぶせているとか…。
S:この曲に関してはキッチリとデモを作ってあったので、デモの段階でもうハモリを作ってあったんですね。「ハモリありき」の部分もあるし。手法としてはやはり主旋律をまず弾いて、それに3度下とか3度上とかのメロを当てはめていきます。
Y:それにしても3度ったって長短あって一発では決まらないでしょう?
S:ま、そうですね。でもそんなに根気強くやるほうでもないし…。肝心なのは上でハモるか下でハモるかということですね。それが決まればそれほど難しくはない。これでも昔10数年クラシック・ピアノの教育を受けていたのが生きているんでしょうね。ポジションで捉えているわけではないので「この3度上の音を弾く」なんていうのは比較的自然にできているのかもしれないです。
Y:では、ギターの場合、特にダブルストップの時みたいに「ルートがここだと長3度はここ」という風に視覚的にとらえてはいないんですか?
S:はい。だから、他人から見ると摩訶不思議なポジションになっていることがあるみたいですよ。
Y:それにしても、残る問題はあれだけのフレーズをよく覚えているなということですよね?アレ、やっぱりハモらせるためにはフレーズを覚えているんでしょ?
S:覚えています。
Y:感覚としては棋士が棋譜を何百手と記憶するみたいなもんですよね?
S:(笑)でも、M1に関しては、手グセのフレーズをハモらせたワケではなかったので少々シンドかったですね!
Y:手グセか…。
S:ウン、もうこの際だからアドリブ・パートは手グセを全部出しちゃおうと思っていたので、反面決めたメロディは手グセではないフレーズにしたんです。特にM1ではテンポがハーフになるところがあるでしょう?あそこのテンポがもう少し早ければ勢いで弾きやすいし、もう少しスローならゆっくり弾きやすいし。ちょうどその間くらいなので難しかった。
Y:他の曲でも随所にハモリが出てきますが、それぞれ異なった考え方で処理されたんですね?
S:はい。ハモるつもりではないのに「ここはハモっておいた方が印象的かな?」という場合には現場処理しました。バッキングの短いハモリなんかは思いつきでやったのが多いですね。パンチ・インなんかも昔に比べて格段に楽になりましたしね。
VintageModernをダイレクトにつなぐ
Y:2曲目の「ABSOLUTE TERROR」ですが、チューニングは?
S:全弦全音(1音)下げで6弦だけさらに全音(1音)下げ。つまりドロップCです。
Y:すごくクリアでいい音に録れていますよね?
S:あれはフライングVを使っています。片側がVintageModernにダイレクト。もう片側が1959にファズ・ボックスをつないで弾いています。1959の方が咬みつくような歪みで、VintageModernはダイレクトにつないでいるのでスムーズな歪みになっていますね。それが混ざり合って2つのトーンでひとつの音のようになっています。
Y:エラクきれいに重なっていますね。
S:そう、1959のギャリっとした歪みとVintageModernの太さが混ざり合っています。ゲインが高いのと低いのが混ざってクリアになったのかなと思います。チューニングも下げているのでリフがクリアになるようにと意識しましたね。
Y:オクターバーも使っていますね?
S:あれも思いつきでプロ・ツールスのピッチ・シフターでオクターブ下を重ねました。
Y:アタッチメントではなくて?
S:アタッチメント(笑:インタビュアー注⇒もう最近はエフェクターを「アタッチメント」と呼びませんよね?マエストロはいまだにエフェクターのことを前時代的にこう呼ぶので以前盛り上がったことがあったのです)で弾いてみたんですけど、思っていた太さが出なかったのでやめました。ここは昔風の太さではなくてスペイシーというか機械的なトーンにしたかったんです。もっとデジタル臭いというか…。
Y:真ん中の「ギュイ~ン」というアームのプレイも印象的です。
S:あれはね、あそこだけレギュラーのチューニングのギターでアームダウンさせているんです。ダウンチューニングしているとどうしても可変幅が狭まってしまうのでね。もう少し言うと6弦だけダウンさせているレギュラー・チューニングのギターをアームダウンさせたんです。
Y:そんなマメなことをしているんですか、マエストロは?!
S:(爆笑)はい!
Y:アルバム全体としては半音下げチューニングですよね?
S:そうです。
日本語の歌詞
Y:3曲目になるとドラムの音がガラっと変わりますね?とてもナチュラルで気持ちのいい音。
S:歌ものなので。ドラムのマッド大内さんはへヴィ・メタル・ドラマーですが、女性シンガーのバックなんかもされているのでそのニュアンスで演って欲しいとお願いしました。さわやかな感じ…J-POP風というか。それでミックスの時にアンビエンスを強くしてみたんです。
Y:前の2曲とキャッチーで曲調もガラっと変わりますが、変にJ-POPにはなっていないと思いますよ。だから統一感も崩れていない…。
S:本人、ものすごくメランコリックになってアコースティック・ギターで始めて…アレ友達が作ってくれたギターなんです…。
Y:で、収録されている歌ものって全部日本語の歌詞ですよね。これも意識されたんでしょ?
S:ウン、あこがれの外国人のボーカルに歌ってもらうという選択肢もあったんですが、自分のイメージしているメタルのアルバムとも違うわけだし、小野正利さんに歌ってもらうことになった時にサッと歌詞とメロディが入ってくるようにしたかったんです。それと「いつもと違う」という意味を込めたら「日本語だよね」という結論になったんです。
Y:とにかくいつもとイメージを変えたかったワケですね?
S:日本語でやるのは難しいけど…昔、コンチェルト・ムーンも尾崎さんという方が歌っていた頃は日本語の歌詞が多かったんですが…何か難しいながら久し振りで楽しかったですね。ネイティブに話せる言葉だからメロディに歌詞をはめやすいけど、その分言葉を選んじゃうでしょ?そこが大変なの。でも、ま、うまくいったかな~?
Y:言葉のリズムの問題がありますもんね?
S:いつもはメロディを楽しんでもらいたい思っているので説教臭い歌詞とかイヤなんです。娯楽ですから聴いて楽しい方がいい。もちろんメロディ以外に歌詞がいいという楽しみ方もあるワケだし、歌詞に考えさせられる部分だって大事だと思いますが、僕は人に教えを説くほどの賢者でもないし…それよりもひと時のファンタジーを感じて楽しんでもらいたいと思うんです。もっとも、僕がシンガーではなくてギタリストだからそう思っちゃうのかもしれませんけどね。
エレクトリック・ギターらしい音
Y:M4「INTROJECTION」ですが、これは「Lady Double Dealer」入ってます?
S:ハハハ!これは正直に言っちゃいますけど…実はこの曲だけこのソロ・アルバムのために作った曲じゃないんです。ずっと昔にデモにしてあったんですね。でもこれをコンチェルト・ムーンでやるにはちょっと古臭いかなと思って使ってなかったんです。
Y:私、全然いけますけど!
S:で、このアルバムを作っている時に、「そうだ、あれがあった!」と思い出して、この機会に世に出そうと思ってそのデモCDを探したんです。で、出てきたCDには「Rat Bat Blue」って書いてあった!(爆笑)仮題で「Rat Bat Blue」ってつけていたんですね。だから、作っている時に「Lady Double Dealer」ではなくて「Rat Bat Blue」を意識していたハズ。
Y:なるほど!このメロデイのギターの音、スゴイですよね?
S:ウーマン・トーンにしてみたんです。
Y:ビブラートを怒っているかのような激しさ。
S:あれは横にスライドさせてかけているんです。
Y:歪みは深い?
S:イヤ、逆にあまり歪んでいない。VintageModernにダイレクトですから。鳴らしていない弦も一緒に思いきりピッキングしてるんです。
Y:ソロではピッキングのニュアンスが恐ろしく強調されているような…。
S:ダイレクトですからね。これは2テイク録ったんです。ボツの方はフロントで弾いたんですが、フレーズはよかったものの滑らかになりすぎて咬みつく感じがなかった。それがイヤでもう一回リアで弾いたところ、こちらの方がイメージに近いという話になったんです。
Y:何かものすごく「エレキ・ギター」っていう感じでカッコいい!
S:それはダイレクトにつないでいるからっていうのが大きいんじゃないかな。ギターをマーシャルにダイレクトに突っ込む、ピッキングを強くすれば歪む。これですよね。
Y:基本的にソロは全編アドリブですよね?
S:ハモリの部分を除いてはアドリブです。
Y:ロードショウをやるたびに思うんですけど、マエストロのアドリブって非常に密度が濃いですよね。
S:イエイエ。
中間さんとのプレイ
Y:さぁ、次はいよいよ「来た来た!」って感じの超ハード・ブギ!(M5「Anger Management」)これは文句なしにカッコいいね!
S:これなんてデモも作っていない。
Y:そうなの?!
S:マッド大内さんと山本くんと、「令文さんや中間さんに参加してもらう曲を今から作るんだ~」なんて話をしてたら、「そういうのはジャムなんだから、わざわざおまえが家で作りこんだりしないで3人でジャムらない?」って言うから「じゃあ」ということになって…急遽スタジオを取ったの。急な話だったもんで6畳くらいの狭いところしか取れなくてね。マッドさんはアンセムで
中間さんとやったこともあって、「中間が弾くんだろ~?そしたら…ズックタックズックタック(ブギのリズムです)ってことになるだろ」って言うから「ああ、そういうことですか」ってなるじゃないですか!それで、始める前にマッドさんが「島はブラックモアが好きだし、俺は今回『カム・テイスト・ザ・バンド』にリッチー・ブラックモアがいたらどうなるかっていうイメージなんだよ」なんてワケのわかんないことをおっしゃるもんで(笑)、「ああ、そういうイメージで大内さんが取り組んでいるんだ…」ということがわかって、突然早いブギを叩き出した瞬間、「まあ、キーはGだな」って決まった。
Y:なんでGなんですか?!
S:ブラックモアはGが多いから。それで、マッドさんと僕が野人のごとく弾き狂っている横で山本くんが書記のように「今のリフがカッコいいと思います」とか言ってくれて、3人で2~3時間ぐらいウワァーと演奏したんです。で、その書記官の山本君が録音してくれて「出来てる、出来てる」ってなった。だから細かいことは抜きにして、レコーディングなので中間さんや令文さんと一緒にジャムってるワケではないけれど、実際にジャムっている雰囲気にはしたかったの。それで、その2曲だけは作曲のクレジットが3人になっているんです。
Y:また、タイトルがいいですね、「Anger Management」なんて。短気は損気?
S:「まぁ、まぁ、アツくなるなよ!」ってとこかな?
Y:ゲストの方の音入れはどうやって?
S:中間さんや令文さんに実際にスタジオに来てもらって、僕らのバッキング・トラックに合わせて弾いていただきました。
Y:ホールズワースとギャンバレのやつみたいにデータの交換とかではないんですね?
S:はい。スタジオに来ていただきました。やっぱりマーシャルをドーンと鳴らしてもらいたかったんでね。
Y:ふたりともご自分のマーシャルを使われたんですか?
S:中間さんは僕の1959を使ってもらいました。どっかのライブで一度僕の1959を中間さんに使っていただいたことがあって、「島君の1959、音がいいね」と気に入っていただいたんです。
Y:どの1959?
S:1973年製なのにハンドワイアードのやつです。
Y:ああ、アレ。覚えています。
S:だから中間さんにはギターとファズ・ボックスだけ持ってきてもらったんです。
Y:本当にふたりともカッコいいソロですね。また、ハーモニクスを使ったバッキングがカッコいい!
S:あれは普通にバッキングをしてても飽きてくるんでやってみたんだけど、ダブルで合わせる(ダビング)のが結構シンドかった!
Y:島さんのソロではもの6連のものすごいフレーズが出てきますね。
S:ああ、弦をとばしたアルペジオ…ウルリッヒ・ジョン・ロートから学んだヤツ。あれは思いつきで弾いたんです。
Y:ウソッ?!
S:だってあれワンテイクですもん。あれは手グセの得意なパターンなの。ワンテイクだという証言者がいますよ。あのソロを録った日、BLIND MANの中村君がスタジオに来ていて、「中間さんだったらアルペジオのフレーズとか弾いてくるよね?俺もやっといた方がいいよね?」って相談したの。で、あれを弾いたらやっぱり「それって考えてあったの?」って訊かれた。
女性ボーカル
Y:それで次の曲でヒックリ帰った!M6「月影」。シャンシャンってメリークリスマス?
S:アハハハ!ま、これは子守唄ですよね。
Y:別にクリスマス・シーズンに合わせたワケではない?
S:イエイエ、女性の方に歌ってもらう子守唄的なアコースティック・ソング。
Y:歌の方は初めて?
S:はい。GI-NA(ジーナ)さんといって大内さんに紹介してもらったんです。
Y:声が太くて高くて伸びやかで素晴らしい。
S:そう。自分がブラックモアが好きで、リッチーがブラックモアズ・ナイトでやっているようなことへのオマージュという感じでやりたかったんです。クリスマスっぽいのかな?子守唄のつもりだったんだけど…。
Y:イヤ、クリスマスなのは鈴だけですよ。GI-NAさんという方は?
S:ソロシンガーとしても活動されてますし、GI-NAというバンドもやってらっしゃいます。大内さんとはEARTHSHAKERのマーシーさんがやってるthe MARCY BANDでマーシーさんとツイン・ボーカルやってる人です。
Y:歌詞はGI-NAさんですよね?これは先に歌詞ができていたんですか?
S:イヤ、曲が先です。デモを渡して、「こういう感じ」って聴いてもらって、女性的な歌詞をつけて欲しいとお願いしたんです。さすがに女性的な歌詞は書けませんからネェ。
Y:女性のボーカルを入れたというのは島さんのアイデアだったんですか?
S:そうです。さっきも言ったとおり、ブラックモアズ・ナイトみたいなことがやりたかったということがあったし、小野正利さんに参加してもらうことが決まるまでは全部女性ボーカルでもいいかなって思っていたんです。
Y:そうした場合、レコード会社の方からいいとか悪いとかいう指令のようなものって出るんですか?
S:いいえ、基本的にはないんですが、今回は全曲女性ボーカルでもいいかもってレコード会社の方からご意見をもらったくらいです。
令文さんとのプレイ
Y:そして、7曲目「JACKHAMMER」。正統派70年代ロック風ですね。タイトルがいい!さすがマエストロ、ここでもマーシャルを意識してる?
S:そうです!
Y:ウソばっか!(爆笑)
S:イヤ、でもダッダッダッダッて杭を打つようなリズムなのでこんなタイトルにしてみました。
Y:令文さんはストラト?
S:MARINOの時の黒いヤツ。お願いしたんです。レスポールで弾こうとされていたんですが、「師匠!ここは子供の頃に憧れた『ストラトキャスターの魔術師』の令文さんで弾いていただきたい!」って。そしたら一緒に来ていたローディに「ほんならアレ持ってきて」と車からギターを持ってきてくれたんです。もんのすごいボロボロのハードケースから例の黒が出てきましてね。
Y:令文さんはご自分のマーシャル?
S:ええ、メインのプレキシの1959でファズボックスだけ通して弾いてくれました。
Y:令文さんはアイドルだった?
S:もちろん!あのアーミングに惚れましたよ。もうレコーディングと時には単なるファンでしたよ。
Y:この曲もジャムで作ったというワケですよね?失礼かもしれませんが、最初の部分は「キャッチ・ユア・トレイン(スコーピオンズ)」ですね?
S:そうですね。Y:また令文さんがストラトを持つとウルリッヒのテイストになるんですよね~。
Y:イヤイヤ、島さんがそのテイストですって!
S:そうですか!(笑)
Y:それでフト思い出したのはまたもやこないだのウリ。やっぱり男女のツイン・ボーカルだったでしょ?これもなんかの符合かなみたいな…。
S:ハハハ!でもやっぱり令文さんも中間さんカッコよかった!あこがれていた人と、今ここまでやってきた自分が一緒にできるなんてやっぱりうれしい。
Y:ウン、この令文さんは深いですよね。
S:自分の聴きたい令文さんをお願いしちゃったって感じ。でも最初は「中間さんとの曲の方が俺にあってんとちゃう?」とか言ってた。
Y:「レイザー・ブギ」って令文さんのカッコいい曲ありますからね。使用ギターのリクエストはしたにしても、「こういう風に弾いてください」とかいくらかお願いしたんですか?
S:一切なし。僕が先に録音したんですけど、ライブでこういうギタリストと一緒にやったらどうなるか、自由に弾いてくださいって感じ。お願いは「ストラトキャスターの魔術師」ということだけ。
小野正利さんの驚異のボーカル
Y:M8「CALLING」の男女混合は島さんのアイデア?
S:男女混合に聞こえるかもしれないけど、ボーカルは全部小野さん。
Y:ウッソ~!!だってアレ片方は女性の声じゃない?
S:イエ、全部小野さん。高い声と低い声でユニゾンしてくださいってお願いしたんです。
Y:小野さんとはどういうご関係?
S:妙なつながりでしてね、昔コンチェルト・ムーンでドラムを叩いていたバロさんという人といっしょにバンドをやってらしたんです。今は違いますけどもともとはハードロックを歌ってらしたんです。
やってみたかった1人多重奏と今の自分
Y:M9「A Will」はどんなコンセプトだったんですか?
S:最後の「To Die For」に行く前に一旦静かに落ち着いてみたいな…こんな機会じゃないとできないということもあって…。あれはキーボードとかを使っていなくて、全部ギターを重ねてつくったんですよ。20回以上重ねたかな?そういうのをやってみたかったんです。昔あったでしょ、ビリー・ジョエルがひとりで全部歌っちゃうヤツみたいな。
Y:「The Longest Time」でしたっけ?
S:そうそう。
Y:いよいよ最後の「To Die For 08」です。
S:これはコンチェルト・ムーンでもやっています。キーボードを入れてね。それをパワー・トリオでやるとどうなるか?ということです。大内さんのアイデアでオリジナルよりテンポも上がっているし。コンチェルトは2001年の録音でだいぶ時間がたって変わって来ていますから、今の自分が弾くとどうなるかということもありましたね。そういうのを残しておきたかった。
何度も聴きたくなるアルバムとは?
Y:これで全編40数分。もっと収録したかったんじゃないですか?
S:僕は元々10曲45~50分で作りたいタイプなんです。CDですからマックス74分入ることはもちろんわかっているんですけど、そうしてしまうと「また最初から聴きたい!」という気分にな
らないといつも思うんです。だからコンチェルト・ムーンの時でも12曲までで60分は超えない ようにしてるんです。収録時間を長くして「お腹いっぱい!」というやり方もあるんですが、僕の場合は自分が一生懸命つくったものを末永く何度も聴いてもらいたいと思うんです。これはソロ・アルバムで自由がきくので、自分としては長くてもせいぜい50分どまりという感じ。歌ものも3曲入っていてギターもいっぱい弾いている。これ以上色々やっても食傷気味になるだけだと思いました。
Y:コンチェルト・ムーンのためにキープしておこうかなんて曲はあったんですか?
S:え~ないですね。でも今度のコンチェルト・ムーンのツアーでは1曲ぐらいこの中からやってもいいかなと思っています。
Y:全10曲、ホントによくできていると思います。
S:でもギターの部分は「作りこんだ」というのはほとんどありません。初期衝動的で挑んだものばかり。
Y:いい意味で「軽い」感じがしますよね。それでもしゃかりきになった部分もあったのでは?
S:イヤ、リズム録りしている時なんかはとても楽しかったし、ジャムの曲も伸ばしたくなっちゃったし、自然にできた感じでした。
お気に入りの1曲と自慢のマーシャル・サウンド
Y:ズバリどの曲が一番のお気に入りなんですか?1曲選べと言われたら。
S:1曲選べと言われたら(キッパリと)「月影」ですね。
Y:またどうして?
S:あのね、「こういう風に仕上がればいいな」と願った通りに仕上がったからです。GI-NAさんが希望した通りに歌ってくれたし、歌詞も書いてくれた。ギタリストとしてはやっぱり両巨頭と演奏した2曲ですね。曲を作った人間としては「月影」。
Y:自慢のマーシャルの音は?
S:あ~、ある意味では「INTROJECTION」かな。というのも今時、ギターとアンプをダイレクトにつないで録るなんてことはしませんからね。自分がこういう伝統的なギターのトーンに惹かれてギターを始めたということが何となく表現できたかなと思います。
Y:さすがマエストロ、ヴィルトーゾ!いいこと言うな~。
S:普段自分が出している音とは違いますが、子供の頃に憧れた音…その音と同じだなんて大それたことを言うつもりはありませんが…そういう音に憧れてギターを始めたというニュアンスをこの曲のリードであり、バッキングで表現できたのではないでしょうか?今、自分で気に入ってVintageModernを使っているワケじゃないですか?その気に入っている部分がストレートに出せたと思います。
今後の予定
Y:レコ初ライブの予定は?
S:特にないんですけど、マッドさんと山本君とのトリオで何かやろうかと思っています。
Y:是非、ボーカルも入れて実現してください。最近の活動は?
S:コンチェルト・ムーン10周年記念のツアーのライブDVDを3月ごろに発表する予定です。もう音のチェックは終わりました。また、キーボードが引退するので…。
Y:エッ、小池さん?脱退しちゃうんですか?
S:イエ、もうミュージシャンをやめちゃうんです。一般人になるご決断をされたんです。ということで春にフェアウェル・ツアーをします。コンチェルト・ムーンとしてはこのツアーの後もコンサートをたくさんやろうと思っています。
Y:ますますのご活躍を期待しています。今日は貴重なお話をたくさんありがとうございました。
S:いいえ、こちらこそ!
アルバムの詳しい情報はコチラ⇒島紀史オフィシャル・ウェブサイト