北島健二、マーシャルを語る~後編
お待たせしました!北島さんのマーシャル・トークの後編をお送りします。
北島健二の機材観
Y:「誰々が使っていたマーシャル」とか特に弾いてみたいマーシャルなんてあります?
K:僕はもともとマーシャルが大好きだし、保守的な人間なんですね。ただ、道具には一切「幻想」を抱かないタイプなんです(爆笑)。話のネタとしては面白いんだけどね。ま、ジミー・ペイジが弾いていたレス・ポールなんて出されたらビビるかもしれないけどね!
Y:なるほど、「幻想」を抱かない…か。
K:自分が使ってナンボ。音を聞いてナンボ。この音大したことないじゃん。エッ、1,000万円!?よかった~、買わないで!みたいな。「オッ!すげぇ音!」ということであればブランドがどうでも買っとかなきゃ!って思っちゃう。まったく実務的な性質なんです。一期一会というか、出会った時の感動とかインパクトの方が大切だと思ってる。そういう意味では何かをイメージで追い求めるということはしないな。
セッティングについて
Y:レコーディングもライブももちろんマーシャルをお使いいただいていると思いますが、何かセッティングなど使い分けていることってありますか?
K:ん~、あの~、ないです。多分。
Y:エッ?!
K:まったくないです。ほぼ同じセッティングです。ただ、レコーディングの場合はセッティングの自由度が増すのに対して、ライブの場合は一気に色んな音を出さなきゃいけないという制約はあるワケ。でも、レコーディングでもライブと同じセットで弾くし、パッと思いついたときに「このサウンドだったら直でつないだ方がいい」となったらエフェクターを取り除くし、たま~にアンプで歪ませてみたりするし。また、アンプをクランチにしてエフェクターで少し歪みを足してみたり。自由度が増しますよね。
Y:なるほど。
K:ライブの場合も会場によってEQは変えますよね。ハイとかローとか出方が違うから。ライブだからとかレコーディングだからとかで音質を変えるのではなくて、その場の環境でEQを調整するワケです。レコーディングでもその部屋に合わせて調整します。つまり、部屋でも小屋でもその場所によってEQは調整しなければならないんです。
Y:会場の音響スタッフにお任せということにはされませんね?
K:自分のところで鳴っている音がどう聞こえているかということだよね。自分の音を作ってから会場のエンジニアと打ち合わせます。ま、滅多にあることではないんだけど、エンジニアが「ギターの音が硬いんですけど…」って言われて、でも僕に聞こえている音は甘かったりすることもあります。「そうなんだ?!」というわけで、アンプの音を甘くして、モニターを硬くして返してもらったりすることが実際あります。
Y:先日、渋谷AXでのTM NETWORKのリハを拝見した限りでは、もう一発で音が決まって、あとは(そうる)透さんと昔のロックの曲でウォーミングアップしてるだけ…という感じでしたが。安定しているというか…。
K:ツアーで何回かやってきていれば大体わかりますからね。オペレーターの方ももうこっちのようすがわかっていますから。
輝かしいキャリア
Y:北島さんはパールでカーマイン・アピスとプレイされたり…。
K:見逃したヤツね。
Y:へ?
K:イヤ、BBAの話し!(笑)
Y:相当後悔されましたね? その素晴らしいキャリアの中で印象に残ったお仕事は何ですか?
K:ん~(長考に入られました)ん~、野外で演奏する機会が少なかったので野外でもライブは印象に残っていますね。いつか九州に行った時、台風がやってきて「いったいできるんだろうか?」って。
Y:グランドファンク状態?
K:そう。演っている時は雨があがって、でもステージがびしょ濡れでメンバーがステージを走ろうとしたら滑ってみたり。
Y:どの時代?
K:フェンスの時。ピンク・クラウドなんかも出てたかな?あと、亡くなったしょこたんのお父さん。
Y:中川勝彦さん。
K:そう。とか、フェンスの初期のころ、まだ技術が初歩的で暑さに耐えかねて機材についている液晶が全部消えちゃったなんてこともあったね。熱に耐えられないってことがわからなかったんだろうね、まだデジタル機器が本当に出てきたばかりの時だから。で、みんなで煽って本番までに冷やしてみたりね。
北島式ギター練習法
Y:最後に若いギタリストたちに何かアドバイスを頂戴できますか?
K:(熟考の末…)ギターを練習する時は左手の運指とオルタネイト・ピッキングを重要視するようにアドバイスしています。それといろんなサウンドで練習することも大切です。いつでも歪んだドライブさせた音で練習するのではなくて、クリーンな音でもキチンと弾けなければならないし、その逆で、いつもクリーンで練習していてイザ本番で歪ませて弾いたらミストーンだらけでどうにもならないなんてこともある。つまり、ディストーションのサウンドで弾かなければ得られないテクニックもあるんですね。どれだけ演奏上のノイズがディストーションさせないとわからないということもあるワケ。ディストーションでもクリーンでもそのサウンドに適したテクニックというものがあるんですね。だからいろんなサウンドで練習するということが大事なんです。だから、逆説的にいえば目いっぱい歪ませて運指の練習をしてもいいと思う。最低でも運指練習は毎日10分やってくださいって生徒には言うんだけど、本当は2時間はやって欲しい。ただこればかりやっているのは辛いので、飽きてきたら思う存分ディストーションをかけてやればいい。
Y:いろんなサウンドで練習するわけですね?
K:そう!気分転換にもなるしね。大抵はクリーンなサウンドで運指練習をしろっていいますよね?でも単純なことをただ長時間やるのは辛いもんです。それを自分なりの方法でいかに飽きずにやるか考えるのもとても大事なことなんです。もうディレイまでかけちゃったり!(笑)とにかく気持ちよく弾いて、途中でいつのまにかクインクインってソロみたいになってもいいし。それで満足したらまたクリーンの練習に戻るということでいいと思うんですよ。集中力を持続させるためにアレンジすることは全然ありだと思う。
Y:どんどん楽しく練習して多くの人にますますギターの魅力に浸かってもらいたいですね。貴重なアドバイスをありがとうございます。
と、ここでインタビューがほぼ終了したのですが、この後、何となく好きなギタリスト談義がまた始まりました。話はジャズ・ギタリストにまで及び、とても濃い内容になったためボーナス・トラック的にここに掲載させていただきます。
続・好きなギタリスト
Y:ひとりアイドル・ギタリストをあげるとすると、やっぱりジェフ・ベックですか?まさかロニー・モントローズではないでしょう?
K:本当はひとり」なんて決められないでしょう?それで最近そういう質問には決まってこう答えることにしているんです。実際にものすごく好きなんだけど、それは、レズリー・ウエスト。
Y:え~?!ホントに?
K:ものすごい好きなんだ。
Y:またアメリカじゃないですか!
K:そうだね!アメリカ人多いね!(大爆笑) 何でかな?
Y:全然イギリス出てきませんね!
K:でも、あの人はグルーヴにカントリーっぽさはあるけれど、いわゆる「アメリカ」の「アメリカ」たるロックとは違うじゃない?オールマン・ブラザーズとか、レイナード・スキナードとか、イーグルスなんかみたいのは確固たる「アメリカン・ロック」としたものがあるじゃない?でも、レズリー・ウエストはそこじゃないよね。
Y:確かに。いわゆるハードロックですもんね。
K:異端児だよね。何がスゴイかって、僕、元々ドラムが好きじゃない?
Y:よ~く存じ上げております!
K:叩くのは趣味で聴くのが好きでね。ドラムの評論家っていうか、ドラムに関してはうるさいんだけど。ま、それは置いておいて。
Y:ウンウン。
打楽器的なギター
K:ギターを弾く場合の打楽器的な部分、音程がある楽器はどうしても打楽器にはなれないんだけど、でもリズムというものは音楽の中でとても大事な部分だよね。そういう意味でレズリー・ウエストってフレーズが4つ位しかないのに最後まで楽しく聴かせてしまうというのは彼の中の打楽器的な要素が大きいと思うのね。リズム感、グルーヴ感がものスゴイ。フレーズ面を追及すればいくらでもスゴイ人はいるんだけどね、ジャズなんかもそう、でもギターの打楽器的なよい面を出している人はそうはいない。あと、チャーリー・パーカー?黒人の。
Y:チャーリー・クリスチャン?
K:そう。パーカーは管楽器か?
Y:アルト・サックスですね。
K:チャーリー・クリスチャンのCDを買って聴いたの。
Y:『ミントン・ハウス』?
K:かな?それで思ったのは、この人は音の出し方とグルーヴが全然違うなってこと。音程的な要素はこの人にとってそれほど大切ではない。サウンドとグルーヴが全然白人と違うというか…。魅力があるよね。みんながこの人がスゴイっていうのはそういうところだと思う。後で白人が同じことをやってもあれほどのパワーとかグルーヴはないよね。
Y:ウェス・モンゴメリーも打楽器的な感じがするような気がしますが…。
K:あの人もそうだね。もっと音楽的なところを加味していった。
白人はクラシックの素養があって音程とかメロディをどういう風に発展させてどれだけ詰め込むかとか。話がそれちゃったけど、レズリー・ウエストもチャーリー・クリスチャンも音程が出せる楽器なのにそういう打楽器的な魅力を出しているんでいくらフレーズが少なかろうと歌い続けられるんだ思う。
Y:私はあるイギリス人の友達からレズリーが実際に使ったピックをもらったんです。体形から察するにさぞかし頑丈なものかと思ったらペランペランだった。
K:結構ソフトを使っている人って多いよね。サンタナとか。
Y:マウンテンなんてご覧になられました?
K:いえ。
Y:Wilkinsonブリッジのトレヴァー・ウィルキンソンから聞いたんですけど、彼が若かりし頃、リヴァプールでマウンテンを見たことがあったそうです。それそれはものスゴイ爆音で最高にカッコよかったらしいですよ。
K:そう。見たかったな。これからも「ひとり好きなギタリストを挙げろ」という無理な質問をされた時はレズリー・ウエストの名前を挙げるようにします。実際好きだし。
Y:アメリカン・ロック好きの北島さんとしてはね!(大爆笑)
アメリカン・ロック
K:アメリカン・ロックは好きじゃないけど、カントリー&ウェスタンみたいなものは好きですよ。とかバンジョーを高速で弾いちゃうようなのとか。ギターでもスゴイ人がいますよね。ブレント・メイスンとかね。
Y:ブレント・メイスンはスゴイですよね!
K:ああいうのは好きなんですけど、カントリー要素が微妙に混ざったロックとか好きじゃない。これが僕にとってまさにオールマンだったり、イーグルスだったり…。
Y:グレイトフル・デッドとか?
K:そう。ザ・バンドも。
Y:ああ、それらこそアメリカン・ロックですね。
K:だからアメリカのロックだったら、ガーっとロックしているのが好き。
Y:グランド・ファンクとか?
K:好き。マウンテン、モントローズ…。
Y:ジミ・ヘンドリックスは?
K:だいぶ大人になってから好きになった。高校の時は「この人はデタラメを弾いてる」と思ってた。「うまい人じゃないな」と思ってた。その辺は常識的にクラプトンとか、ジミー・ペイジとか、「こういうのがウマイ!」て思い込んでた。30近くになってスゴイって思うようになった。
Y:曲もすごくいい。
K:うん。それと歌。あの人の歌こそスゴイね。声が太くてセクシーで。いわゆる黒人のグルーヴじゃなくて、ジェフ・ベックにも似たタイミングのグルーヴっていうかな~?リズムに乗るっていうんじゃなくて「間」みたいなね。そういうグルーヴがスゴイんだ。
Y:イヤ~、色々な音楽の聴き方があるんだな~っととても勉強になりました。長い時間ありがとうございました。
(2008年6月10日 弊社スタジオにて収録)
