MG30DFXSの秘密~スパイナル・タップとMG30DFXS
その歴史の中で一度だけカラーモデルを発表したことがあるMGシリーズ(赤の100Wハーフスタックを発売)。そして、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテ愛用の2555 Silver Jubileeと同じカラーのMGが完全限定製作され、この度開催された楽器フェスティバル2008で10Wから100Wハーフスタックまでのすべてのモデルをお披露目しました。大人気の、そして珍しいMGカラーモデルだけあってたくさんの方から熱心に注目をよせていただきました。
ラインナップはMG10CDS、MG15CDS、MG15CDRS、MG15DFXS、MG30DFXS、MG100DFXS、MG412ASの7モデル。どの機種もグレイのカバリングにシルバー・フロントパネルが目を惹くクールなMGですが、特に注目してもらいたいのはコイツ。
MG30DFXSです。まずは、全世界でこのMGスペシャル・シリーズは発売されますが、30Wモデルが発売されるのは日本とアメリカだけ。それだけではありません…というかそれはどうでもよくて、注目してもらいたいのはこちら…。
エ?何が珍しいのかって?それじゃ、答えを出しましょう。
そうなんです。MG30DFXSのコントロールの目盛りは0から10ではなく、すべて11まであるのです!ミスプリじゃないかって?イエイエ、これには秘密があるんです。この秘密がわかる方はなかなかのロック通かもしれません?
ネタはこれ。
さぁ~て、ここからがマーシャル・ブログ名物のウンチク大会です。お時間のある方でロック好きはお立会い、お立会い!
この写真はマーシャルのJCM900発売時の広告。フロント・パネルを指差しているのはナイジェル・タフネル。本名クリストファー・ゲスト。ナイジェルはイギリスの半架空のロック・バンド、SPINAL TAP(スパイナル・タップ)のギタリストです。ナイジェルはこの広告の中で「とうとう'20'まで行っちまった…9もデカイんだぜ、な?」と言っています。
そして、このスパイナル・タップを主人公にした1984年のロブ・ライナー劇場公開初監督作品が『スパイナル・タップ(原題:This Is Spinal Tap、日本未公開)』なのです。(ロブ・ライナーは『スタンド・バイ・ミー』、『ミザリー』、最近では『最高の人生の見つけ方』などを制作した今やアメリカを代表する大監督です)
この『スパイナル・タップ』はバンドをやったことがある人やロック好きの方にとっては抱腹絶倒のコメディで、イギリスからアメリカに渡ったスパイナル・タップのツアー中に巻き起こるトラブルをドキュメンタリー・タッチで描くという内容。(まだご覧になったことのない方のために内容は詳しくは書きません…)
イギリスでは知らない人がいないくらいポピュラーな映画で、日本のミュージシャンの中にも『ファントム・オブ・パラダイス(ブライアン・デ・パルマ監督)』と並んで熱心なファンが大勢いらっしゃいます。そして、この映画の話に及ぶとミュージシャンの皆さんは決まって「あれって本当にありそうな話なんだよね~!実際に似た体験をしたよ」などとおっしゃいます。さすが、ロブ・ライナー、実によくできている映画なのです。
さて、映画の中には、ナイジェルが取材を受けて自分の機材を紹介するというシーンがあり、「普通のアンプは目盛りが"10"までしかないけど、オレのアンプは"11"まであって他のアンプより"1"音がデカイんだ!」と自分のマーシャルを見せます。
そして、上の広告に戻ってください。ご存じの通りJCM900シリーズのGAINの目盛りは0から20までついていますよね?だからナイジェルは、"20-11"で"9"ラウドだと言っているワケです。(ちなみに映画の中にナイジェルの"These go to eleven"とか"Put it up to eleven"というセリフがあります。この"up to eleven"というのが「メチャクチャ音が大きい」という慣用表現として定着し、The Shorter Oxford Dictionaryにも掲載されているそうです)
今回のMG30DFXSの目盛りはここから来ているんですね~。でも、回路も機能も普通のMGと同じですので、「普通のMGより"1"ラウド」ということはありませんのでアシカラズ…。
因みに写真は筆者が保有するスパイナル・タップの関連グッズです。右からイギリス版DVD(2枚組)、国内盤DVD、そして、ロンドンの本屋で見つけた公式ガイドブック(英語版)です。このガイドブックには台本の他、映画に関するA to Zが掲載されており、もちろん「M」のところでは「Marshall Amp」で1項設けられています。そして、「この映画をもとに"10"以上の目盛りのあるアンプが発売され(JCM900のこと)、現実的に一般のお客さんも"10"以上の目盛りのあるアンプを手にすることができるようになった」などど書かれています。また、ジム・マーシャルがハリウッドのRock Walkにその名を加えた日、クリストファー・ゲストがタップの主人公に変装してジムに付き添ったと書き記してあります。
このナイジェル、『ファントム・オブ・パラダイス』のスワン(ポール・ウィリアムズ)、『ロッキー・ホラー(ピクチャー)ショー』のフランクフルター博士(ティム・カリー)はロック映画の3大キャラクターなのでは?(最近では『スクール・オブ・ロック』のシュニーブリー先生(ジャック・ブラック)も加わるかも知れませんね?!)
最後に、ナイジェル・タフネル、いや本名クリストファー・ゲストの奥さんは往年の名優、トニー・カーチス(『魔術の恋(「脱出王」の異名をとったアメリカの奇術師、ハリー・フーディーニの伝記映画)』『お熱いのがお好き』、『空中ぶらんこ』、『グレート・レース』など)とジャネット・リー(『サイコ』)の愛娘、ジェイミー・リー・カーチス(『トルゥー・ライズ』でシュワちゃんに騙されるあの奥さん)です。彼女はこの映画を観てクリストファーに一目惚れをしてとうとう結婚しちゃったとか…。
最後までウンチクにお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。






