Marshall LAWはマーシャルが年1回発行する小冊子で、人気アーティストのインタビューや新商品の情報、世界中のマーシャルにまつわるエピソードを満載し、フランクフルトの展示会で配布され始めます。
Marshall Blogではオリジナルの英語版Marshall LAWから人気のミュージシャンに関する記事を抽出してその日本語版をお送りします。今回は2008年3月に発行された通算第10号のMarshall LAWです。

2008年度版Marshall LAW最後の登場はSlayerの御大Kerry Kingです。ご存知のようにKerry KingはZakk Wyldeに次いでJCM800 2203KKとMG10KKというシグネイチャー・モデルを発表するという栄誉に恵まれました。もちろん、それはKerryが長年マーシャルを愛用し、シグネイチャーモデルをつくるにふさわしい素晴らしいギタリストであるからです。そして、同様に素晴らしいのは2203KKの仕上がりです。そのサウンドとアイデアは世界中で高い評価を得、Children Of BodomのAlexi Laihoも2203KKを使用しています。
TONE FIT FOR A KING
~王者〈キング〉にふさわしいトーン~
スレイヤーの武器マニア、ケリー・キングが暴虐のシグネイチャー、JCM800 2203KKの誕生についてMarshall LAWに語ってくれました。
スレイヤーは、ただのバンドではない――ひとつの“制度”といってもいい。猛獣のように強烈で容赦のないメタルぶりは、彼ら自身が創造したものであり、今もその王国に君臨していることは議論の余地がない。早い話が、スレイヤーは唯一無二の存在であり、20年以上にわたって、その暗黒の領土を支配しているのだ。瞬時に聞き分けられるケリー・キングのトーンは、スレイヤー伝説に欠くことができないものだ。彼の恐ろしく邪悪でありながら人を動かさずにはおかないリフや、稲妻のように速い右手、熱狂的なリード・ワークも絶対不可欠だ。
スレイヤーが過去20年間、絶え間なく世界中をツアーで回り、どのステージでもマーシャル1960B 4x12”キャビネットを最低でも24台は積み上げてきたおかげで、このバンドはマーシャルの最大にして最も目につく伝道師としても知られている――これについてマーシャルは彼らにとても感謝している。しかし何よりも感謝しているのは、80年半ばから彼らが輝かしいメタルを我々の耳をたたきつけてきた、印象的で、時に背筋の凍るような瞬間の数々なのだ! ケリーと仲間たちに対して我々が感じている尊敬の念と同等のものを、彼はマーシャルとジムに対して抱いている。ミスター・キングは、ジム・マーシャルと数年前から固い友情を結んでいる。「オレはマーシャルの壁の前に立つ時に、男の大事な部分が震えるのを感じたいんだ。それができるのは、マーシャル2203だけだな」キングはニヤリとしてから、圧倒的な自信をもって次のように述べた。「オレの意見では、ジム・マーシャルこそが究極のロック・スターだ。オレらみんなのサウンドをよくしてくれるんだから」
上記の反駁できない事実と、オンステージとオフステージの両方でケリーとマーシャルの間に築かれた固い結びつきがあったからこそ2007年にマーシャルがケリーのシグネイチャー・アンプである2203KK JCM800 100Wヘッドを誇らしげに発表した時には、誰も驚かなかっ
た……驚いたとしたら、ギタリスト本人かもしれない!
「ヘッドにジムとオレのサインを連ねることは、またとない、すばらしい名誉だよ。しかもスラッシュと、オレのよき友人のザックに続く3人目なんだから――この顔ぶれに文句のつけようはないよ。それに、オレのヘッドを出すくらいジムがオレのことを評価してくれたなんて、すごく感動的で光栄なことだよ」
マーシャルの有名なフロントパネルに、ジム・マーシャルとサインを連ねたアーティストはケリーが最初ではない――本人も言っているように、彼より前にスラッシュとザック・ワイルドがいた。だが、ケリーのシグネイチャー・モデルである2203KKには、史上初のことが2つある。まず、ケリーのアンプは限定発売ではない。レギュラーの製品として今後何年もマーシャルのラインナップに残るだろうと我々は確信している。また、スラッシュの2555SLやザックの2203ZW、ジミ・ヘンドリックスへのトリビュートであるSUPER100JHと違って、2203KKは、ケリーと同義語であるJCM800を正確に復刻したリイシュー版というだけではない。ミスター・キングが有名にした圧倒的な迫力のある独特のサウンドの重要な要素である、エキサイティングな新しい“ひねり”が加わっている。もっと詳しく知りたいって? ケリー自身に説明してもらおう……
「オレのサウンドにとって大事なのは、ディストーションとパンチ力。それから、ゲインが多すぎるせいで変わっちまったり、ぐちゃぐちゃになったりせずに、ノートやコードがひとつひとつきっちり伝わって、リフがよく聞こえるトーンが重要なんだ」とケリーは指摘する。「知ってるかもしれないけど、オレは最初からずっとJCM800 2203 100Wヘッドを使ってきた。あのサウンドが大好きだった。でも、2203が与えてくれるものに、ちょっとプラスしたいものもあった。ゲインを上げて、中音域をちょっと上げてくれるようなものだ」
「だから、もう何年も前から古くて薄汚いハーフ・ラックの10バンド・グラフィックEQを使って、それでゲインを押し上げて、中音域を強調してた。おもしろいことに、オレらみたいな音楽をやる場合は、ミドルを抜くもんだって思ってるヤツが多い……だがそいつは間違いだ! その正反対のことをやってる。真ん中を押し上げてるから、オレのEQのカーブは、スマイルじゃなくて、しかめっ面になってる。中音域を強調して歯ごたえのあるサウンドにしてるんだ」
「オレは2203をいっぱい持ってるけど、80年代半ばから持ってる1台のJCM800を、“ザ・ビースト(野獣)”と命名した。他のヤツをみんな打ち負かすからだ」とキングは続ける。「まるでサタンが地獄から手を伸ばしてあのヘッドにさわって、ジムと共謀して、他のヤツとはまるで違うのを作ろうとしたみたいだよ!」
「あれはオレのサウンドの“救世主”だね。最初からずっと、ライブとレコーディングの両方で
メインに使っている。だから、シグネイチャー・ヘッドのプロジェクトが始まった時、オレはジムのR&Dチームに“ザ・ビースト”とオレのメインのグラフィックEQを渡したんだ。オレの設定にぜんぶ印がつけてあるヤツをね。それを使っていろんな測定をして、正確にコピーして、ヘッドの中で組み合わせたんだよ――オレ特有のEQカーブは、“Assault”というひとつのコントロールに入れて、おまけにビックリするくらい効果的なノイズ・ゲイトもつけた。それから、ウォームさと厚みを加えるために、パワー・アンプにKT88管を使った。その結果誕生したのが、今まで見たことがないくらいクールなものだったよ――死ぬほどヘヴィで、すごいサウンドだ」
興味深いことに、ケリーオリジナルの“ビースト”は、「他のヤツをすべて打ち負かす」ような強烈な咆哮を秘めているにもかかわらず、100%の既製品である。そのユニークなサウンドはどこから来たのだろう?
パーツの品質基準とその許容範囲(80年代当時は、現在我々が部品供給業者に要求するような厳しいパーツの品質基準が守られることはあまり期待できなかった)、がうまい具合にかみ合い、このアンプをケリーの“救世主”にしたのだった。
“ザ・ビースト”独特の雄叫びをコピーするため、ケリーがすでに語ったように、我々は基準からはずれているようなパーツのひとつひとつを測定した。彼が入力信号をドライブするために使うグラフィックEQのカーブについても、同様に分析した――これは2203KKのフロントエンドに組み込み、ミスター・キングが自ら「Assault(襲撃)」と命名したコントロールとなった。2203KKには、スタジオ品質の調整可能なノイズ・ゲートも搭載されている。ノイズ・ゲートを加えた理由は単純で、「Assault」スイッチを入れると2203KKに驚くほどのドライブが加わるが、ゲートがあるおかげで必要な時にはアンプが墓場のように静かになる。例えば、ケリーのようなプレイヤーがスタッカートの攻撃的なリフを歯切れよくするために「沈黙の穴」を作る時などに使える。このゲーティングをタイトでありながらプロらしく控えめに稼働させるために、最先端のレコーディング・スタジオに採用されているような超高速の拡張回路が採用された。これにより、タイトで精密なスタッカート・リズムの中で、ゲートが非常に迅速に作動するのだ。
一方、サステインを得たい場合には、拡張回路がノートのダイナミックスに従って次第に減衰させ、ノートやコードの“しっぽ”を急に切断せずに自然に響かせるため、ナチュラルなサウンドのゲーティングができる。
大衆の度肝を抜いた2203KKの発売前に、ミスター・キングが究極のロード・テストを実施し
た。彼はまず、2203KKのプロトタイプを使ってグラミー賞に輝いたスレイヤーの新盤、『クライスト・イルージョン』をレコーディングし、その後、数台のプロトタイプを携えて18カ月の過酷な世界ツアーに出発した。「このアンプがちゃんと持ちこたえてくれて、道中に問題を起こさないことを確かめたかったんだ」とケリーは言う。「バックアップをいくつか持っていたけど、1度も出番がなかったよ。このアンプは完ぺきだ」
最近『Guitar World』誌に掲載されたベタ褒めの批評には、「火薬が発明された時と同様に、このアンプは新種の“爆弾”や“メタル・マシン”の方向性を示すだろう」と記されていた。マストドンのビル・ケリハーやヘルイェーのトム・マックスウェルも同じ感想を持ったようで、どちらもライブで2203KKを使っている。同じくこのヘッドのファンになったのが、フィンランドのギター・ヒーロー、アレキシ・ライホで、彼は最近、チルドレン・オブ・ボドムの待望のCDをレコーディングする際に、アンプの兵器庫に2203KKを加えた。また、2008年冬のNAMMショーでESPのために演奏をした時は2203KKだけを使った。
「2203KKのパンチ力は、全盛期のマイク・タイソンと匹敵するくらい強烈だよ」とキングは断言する。「EQをつなげた“ザ・ビースト”とまったく同じサウンドを生み出してくれる。外部の機材をまったく使わずにそれができるんだ。プラグインしてプレイすればいいだけだから、最初のプロトタイプを使った時からずっとそうしてるよ! その後のすべてのライブでこれを使ってる。“ザ・ビースト”は引退生活を楽しんでるよ。今やオレのメインのヘッドは2203KKだし、今後はずっとそうだからな」