Marshall LAWはマーシャルが年1回発行する小冊子で、人気アーティストへのインタビュー、新商品の情報、世界のマーシャルにまつわるエピソードを満載し、毎年フランクフルトの展示会で配布され始めます。Marshall Blogでは人気のミュージシャンに関する記事を中心にダイジェストで日本語版をお送りします。今回は2008年3月に発行されたMarshall LAW通算第10号の登場です。是非お楽しみください。
Marshall LAW日本語版…今回も大物の登場です。まったく人気が衰えないどころか、自分のスタイルを突き進めギター界のトップに君臨する男…VintageModern Manスラッシュの登場です。
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THE CAT IN THE HAT IS BACK!
~トップハットの男が帰ってきた!~
ヴェルヴェット・リヴォルヴァーの2作目のアルバムが大ヒットし、ワールド・ツアーは再び大成功を収め、伝記はベストセラー入りし、地球上でもっとも売れているゲームソフトに登場し、月刊誌『Guitar World』に連載コラムを持ち、2008年の読者投票で圧倒的人気を博す——これらすべてをこの12カ月の間に成し遂げたスラッシュは、「天は二物を与える」ことを証明した!
信じがたいことだが、ガンズ・アンド・ローゼズの傑作デビュー・アルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション』は、今年で発売から21年目を迎えた。1987年にこのアルバムが世に登場したとき、ロックの世界はヘア・メタル・バンドや、トンガリ・ギターにスウィープ・ピッキング、ロック式トレモロ・ユニットの乱用、両手タッピングなどに入れこむシュレッド好きのギタリストたちに支配されていた。そこへ突如現れたのが、ガンズと、トップハットをかぶったクシャクシャ頭の若いギタリスト、スラッシュだった……。
レス・ポール、ジム・ダンロップのワウ・ペダル、マーシャル・スタックに身を固めたスラッシュが送り出す有機的な音色やブルースをベースした輝かしいサウンドは、当時主流だったネオクラシカルやタッピング狂のロック界に、新鮮でうれしい変化をもたらした。世界一の売り上げを誇るギター雑誌『Guitar World』は、すぐに彼を「ギター原点回帰運動の父」と名づけた。『アペタイト・フォー・ディストラクション』は飛ぶように売れ、こうして新たなロック・ギター伝説が誕生した。まぶしいほどの輝きを放ち、90年代半ば、スラッシュはジム・マーシャル以外でマーシャル・アンプにサインが入った初めての人物として歴史にその名を刻むこととなる。
世界中の無数のガンズ・ファンにとって残念なことに、90年代半ばは、このバンドの分裂癖が発覚した時期でもあった。ガンズは健在であり、これまで頻繁に話題にのぼり、何度も発売延期されてきたアルバム『Chinese Democracy』もきっといつかは店頭に並ぶだろう……ただ、以前にも本誌で指摘した通り、数多くのファンにとってスラッシュのいないガンズは、ジャック・ダニエルの入っていないジャック・コークみたいなものなのだ!
発売開始から21年の間に『アペタイト・フォー・ディストラクション』の売り上げは、米国だけで1600万枚を超えた。現在は別のバンドで活躍しているが、スラッシュは未だにレス・ポールをマーシャルにつなぎ、トレードマークのトップハットをかぶり、誰もが知っている有名人であり、定期的に世界中のギター雑誌の表紙を飾り、とりつかれたようにギターを弾き、あのしびれるような音を出し続けている。「天は二物を与えず」ということわざがあるが、それはロックのスターダムにも当てはまる。つまり、1人の人間が2つの違うバンドでスターの座にのぼりつめることはほとんど不可能に近く、しかも、その一方がガンズのようなスーパースター・レベルの場合は前代未聞だ……その人物がスラッシュでないかぎりは!
前述の通り、スラッシュの(やや)新しいマルチ・プラチナ・バンド、ヴェルヴェット・リヴォルヴァーの2作目のアルバム『リベルタド』が世界各地で熱狂的支持を受けてチャートの上位に食い込んだことに加え、2007年は、すでに驚異的な彼のキャリアのなかでもまちがいなくもっとも成功した年だったと言えるだろう。この年、スラッシュは自分そっくりのCGキャラとして大人気ゲームソフト『ギターヒーロー3』のスターになっただけでなく、この製品のパッケージや広告にも登場し、伝記『Slash』は高い評価を受け、ベストセラーにランクインし、ブックリストにも入った。アリス・イン・チェインズとともに実施したUSツアーは、その年のもっとも印象的なライブのひとつであり、さらに『ギター・ワールド』誌にて10カ月間連載した大好評のコラム——「ザ・キャット・イン・ザ・ハット」というぴったりのタイトルがついていた(訳注:同名の有名な絵本の主人公がトップハットをかぶっていることから)——は最近終わったばかりだ。
目覚しい活躍ぶりだが、スラッシュにとって2007年がどれだけすばらしい年だったかを判断するいちばんの方法は、ファンの評価を聞くことだ。そして彼らはとびきりすばらしい評価を下した! 最近発表された『Guitar World』誌の読者投票で、スラッシュは誰もがうらやむ年間MVP(最優秀プレイヤー)と最優秀ロック・ギタリストの両方の部門で、圧倒的な人気を博し、1位に選ばれた。さらにボーナスとして、『リベルタド』は最優秀ロック・アルバムを受賞し、ロナウドやロナウジーニョも喜んでくれそうなハットトリックを決めた。本人は、投票結果をどう思っているのだろう。
「あれにはマジでメチャクチャびっくりした……言葉も出なかったよ! すごく光栄だし、いつも応援してくれて、評価してくれる『ギター・ワールド』の読者のみんなには心から感謝している」
VintageModern Man
それから、もうひとつ……2007年、スラッシュは伝説の2255を中心とした機材に新しいマー
シャル・ヘッドを導入した——VintageModern 2466の100Wアンプヘッドだ。なぜか? それは本人に説明してもらおう……
「ガキのころ、世の中でいちばん手に入れたいものはマーシャルのアンプだったよ。当時みんなが欲しがってたのは、ボリュームを上げると80年代初めの有名メタル・バンドみたいな音が出るやつだった」とスラッシュは振り返る。「だけど、俺のお気に入りは、プリアンプ・コントロールのついてない古い型のマーシャルで、思いっきり出力を上げると、すごく温かいロックンロール・サウンドが出たんだ。かなりアグレッシブで、ピック・サウンドもよく聞こえたけど、それでもとてもナチュラルな音だった。ビンテージモダンのヘッドは、それを思い出すよ」
「2466の音はホントに最高だよ。いちばんすごいのは、サチュレーションの状態でもギターの自然なニュアンスが失われないこと。大きくて、温かくて、滑らかで、安定した音なのに、アンプにのまれることもないし、弦が指板にあたる音も聞こえる。俺にとってそれはすごく大切なことなんだけど、ほとんどのアンプでは消えてしまうんだ。2466は、俺のアンプ(2555)の長所がぜんぶ備わっている上に、2つのプリアンプ・コントロールを使って、ロー・エンドをすごくタイトにできる。ナチュラルで、とてもいいサウンドを実現してくれるから、このアンプヘッドを作ってくれてホントにうれしいし、他にも喜ぶ人がたくさんいるはずだよ」
出発点
スラッシュのギター人生が始まったのは、15歳のとき。最初のギターは「祖母が物置の奥で見つけたスパニッシュ・ギターだった」と明かす。若い頃に影響を受けたのは「ジミー・ペイジ、ジョニー・ウィンター、エリック・クラプトン、ジミ・ヘンドリックス——全員重みのあるソリストだったから」という。
その後、この若きギタリストに人生を変えるような瞬間が訪れる。「初めて本物のレス・ポールを本物のマーシャル・スタックにつなげたときだよ」彼はニヤリとする。「17歳ぐらいだったと思うけど、あれにはたまげたよ。それまで、ゲインやボリュームの容量があれだけあるものには触れたことがなかったからね。全部のレベルを最大限にして、コードを弾いたら、腰が抜けそうになったよ! でもすぐに調整の仕方を覚えて、それ以来ずっとマーシャルを使ってきた」
スラッシュは、ギブソン・レス・ポールとマーシャルのヘッドという組み合わせの象徴であるだけでなく、マーシャル1960BVキャビネットからもすぐに連想される存在だ。彼がこのキャビネットを愛用する理由は単純明快——音のよさだ! 「いろいろ試してみて、気に入ったのを見つけただけなんだ」とこのギタリストは言う。「実は、アンプのことはあまりよく知らないんだ。わかっているのは、マーシャルとセレッションの組み合わせは、必ずいい音が出るということ。でも、キャビネットにどんなセレッション・スピーカーが搭載されているかによっても違いが出るね(註:マーシャル・オフィシャル・ウェブサイト「キャビネットの選び方」を是非ご参照ください)」
この記事が出る2008年春、ヴェルヴェット・リヴォルヴァーはヨーロッパ・ツアーを行っているはずだ。その後の予定は? 「ツアーに関しては、今のところ他に予定はないんだ。メンバー全員が次のアルバムを作るのに集中したいと思っているから……どうなるかは、わからないけどね!」彼はニヤッと笑う。
「『リベルタド』はこれまで作ったアルバムで、インプロヴィゼーションがいちばん多かったけど、次はヴェルヴェット・リヴォルヴァーでやってきたなかでも、メロディがきちっと構成されたソロの曲を増やしたいと思っているんだ」とトップハットの男は続けて言う。「俺たちはバンドとしてまだ成長している途中で、このバンドをやっている楽しみの半分はそこにあると思う。ある日突然、すべてが完全にシンクロして、あとは成り行きに任せればいいという状態を模索中なんだ。そのために頑張っているようなものだよ。すべての音がひとつになって、あとは自然の流れに身をゆだねればいいという至福の状態にたどり着くために、みんな必死にやっているんだろうね」