Marshall LAWはマーシャルが年1回発行する小冊子で、人気アーティストへのインタビュー、新商品の情報、世界のマーシャルにまつわるエピソードを満載し、毎年フランクフルトの展示会で配布され始めます。
Marshall Blogでは人気のミュージシャンに関する記事を中心にダイジェストで日本語版をお送りします。今回は2008年3月に発行されたMarshall LAW通算第10号の登場です。是非お楽しみください。
Marshall LAW日本語版の第4弾は2007年の日本武道館でのライブも記憶に新しいマイ・ケミカル・ロマンスの登場です。メンバーのレイ・トロもフランク・イエロも昔からのマーシャル・ファンです。
MY CHEMICAL ROMANCE
僕たちはエジンバラの田園に広がるなだらかな丘をトボトボと歩いた。他の“McRmy”の仲間と一緒に。泥にまみれ、血にまみれ、ビールにまみれながら……。JCに感謝!(だが、これはキリストのCではない。キャッシュのCだ。)とてつもなくビッグになること間違いないバンドに会いに行く。マイ・ケミカル・ロマンス。ミルトン・キーンズにあるマーシャルの工場からスコットランドの「T in the Park(註:スコットランド最大のロック・フェスティバル)」まで、遠路はるばるやってきたのだ。この騒ぎがいったい何なのか、それを突き止めるには、どうしてもマイケミのレイ・トロとフランク・イエロに会う必要があった。
バックステージのアーティスト・エリアには、ビール・テントがあった。僕たちは、そのままMCRがいる仮設キャビンの楽屋へと向かった。そこで僕はレイに紹介された。ほとんど言葉を交わす間もなく、スタッフのひとりがレイに、脳腫瘍の女の子のためにサインが欲しい、と言った。レイは喜んでサインをし、その子を楽屋に連れてきてバンドのみんなと会わせることはできないか、と言った。それは無理だと思うとスタッフが言うと、レイは心底がっかりしていた。
この最初のやりとりで、レイという人間が少しわかったような気がした──レイはいいヤツで、ファンと向き合い、誠実にファンのことを考えている男なのだ、と思った。僕たちはファンについて、つまり、McRmyについて語り合った。ファンがどれほどバンドのプロモーションに深くかかわってきたかについても。レイは以前、いかにバンド自身がCDやプロモーション・グッズの制作にもかかわっていたかを話してくれた。以前は、バッジやその他のプロモ・グッズのアイディアも考えたものだったと言った。それはそれで、当時は大変だったが、そういう時間が持てた頃が懐かしい(今はそれがなくなってさびしい)、そんな印象を受けた。
バンドの初期の頃の話を聞いていて、僕は彼らの最初のヨーロッパ・ツアーの話に興味を覚えた。ヨーロッパに着いてバスをチャーターしたが、運転手を雇うまでの金はなかった、やむなくマイキー・ウェイが運転し、レイがナビをしたという。そんなおかしな状況で、ヨーロッパ各地を回り、道に迷ったことは別として、とても楽しい時間をたくさん過ごしたようだ。バンド全体にそういう印象を受けた。みんな、笑うことと楽しむことが大好き。テック・スタッフも含めて、みんなが家族だと思っている。夕方になり、僕がまだレイとフランクと雑談していると、他のメンバーはフルーツでベースボールを始めた。(あれは絶対フルーツだったと僕は思う!)こうした様子はすべて、彼らが打ち出している独特の音楽ブランドのイメージにそぐわないように思えるが、実際会ってみたことで、今の僕は、彼らの歌詞が理解できる──社会へのメッセージ、人生の厳しさに対する認識、そしてブラック・ユーモアが入り交じっている。
レイがステージに立つ準備をする間、僕は楽屋を出て、アーティスト・エリアを見て回った。クークス、ピート・ドハーティ、そしてレイザーライトらが話しかけられる距離にいた。他にも、知っていても名前が思い出せない顔が何人かいた。じゃまをしたくないと思った僕は、バーに行った。多くのフェスティバルの客と同様僕も気づかなかったのは、ドタキャンしたバンドがあり、そのためMCRは予定より早くステージに上がり予定より長いセットをやったことだった。
「T in the Park」のレビューによれば、MCRがステージに上がった当初、客席は空いていたが、早めにステージに上がったという話が広まると、「その日最高のセット」を見ようとみんなが急いで駆けつけた。そのため、僕はステージ近くに席を確保することができず、やむなく柵のステージ側に回り、その後はステージの上から最後まで観賞した。
レイがギターを交換しているとき、僕とレイの目があった。そして『Cancer』が始まった時、レイは僕のほうに近づき、何と、僕に話しかけてくれたのだ! 残念ながらダウンロード・フェスティバルでの演奏を聴きそこなった僕だが、その瞬間、なぜ彼らが『ケラング!』の最優秀インターナショナル・バンド賞に選ばれたのかわかった気がした。彼らのステージは半端じゃない。彼らの音楽にはすべてがある──詞は最高、ギターは抜群。ズボンにビリビリくるようなベース・ライン、心臓がどきどきするようなドラムス。偉大なるバンドリーダーと、圧倒的な技術力で支えるそうそうたるメンバーがいて、最高のバンドが構築されているのだ。
セットが終わったあと、僕はレイとともにバンに飛び乗り、アーティスト・エリアに引き返し、バンド仲間とともに首尾よくビールジョッキを握った。彼らの表情から、心底、演奏を楽しんだことがわかる。それにしても、この自信と演奏力は一体どこから来るのだろう? レイに関しては、僕たちは彼の兄貴に感謝しなければならないようだ。いつも深夜までギターを弾いていたそうで、レイがギターにハマったのはそのためだった。
レイは、絶大な自信を持って演奏してはいるが、いつもそうだったわけではないと告白した。16歳で初めてギグで演奏したときは、フレンチ・レストランのカエルみたいにビクビクしていたそうだ。
機材に関していえば、彼は昔からマーシャルに入れ込んできた。この取材をした時点で彼は、マーシャル・メジャー(註:200Wのギター・アンプが1967。1967~1974年まで製造されていた。他にPA用の1966、ベース用の1978があった)を買おうとしていた。すごい馬力のあるアンプでリッチー・ブラックモアが使っていたモデルだ。昔のマーシャルが好きなのはレイとフランクに共通していて、ふたりともJCM800に興味を持っている。キーボード奏者のジェームズでさえ、旧いJCM900ヘッドとキャビネットを持っている。みんな、共通点がとても多い。共に過ごした学生時代からそうだ。
僕たちは、アルバム『ブラック・パレード』がコンセプト・アルバムであることについて話し合った。そして、ロックの巨匠で、マーシャルの良き友人であるアイアン・メイデンとエディにも彼らが影響を受けていることがわかった。
『ブラック・パレード』は、“つなぎ”の曲がひとつもないアルバムだ。1曲1曲の完成度が高く、このアルバムから3曲目がシングル・リリースされる。フランクとレイは、いつかこぢんまりとしたギグをやりたいと言った。だが、今となっては、それはとても難しいだろうと思う。
10月のO2アリーナでの公演を前に、レイはマシュー・コルテスを連れ立ってファクトリーに立ち寄ってくれた。僕たちは幸運にも彼らと一緒に過ごす時間が持てた。そして、レイが複数のマーシャル・アンプを使って演奏するのを聴いたが、レイがVintageModernをものすごく気に入っていることは明らかだった。現在、レイはVintageModernを、フランクはJVMを使っている。
目下アメリカをツアー中のMCRだが、近いうちにイギリスに戻って来てくれることを期待しよう。
ニュー・アルバム『ブラック・パレード』は、絶賛発売中!