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2008年7月 4日 (金)

石原SHARA慎一郎、マーシャルを語る

デビュー25周年を迎え今なおジャパニーズ・ヘヴィ・メタルの最高峰に君臨するアースシェイカー。その中心人物、石原SHARA慎一郎さんにたっぷりとマーシャルについて語っていただきました。

マーシャルとの出会い

YMT(以下Y):いつも通りまずは、皆さんにお聞きしている月並みな質問からまいります。本でもレコードでもコンサートでも何でもいいんですが、SHARAさんが一番はじめにマーシャルを意識したのはいつごろ、どうやって?
石原SHARA慎一郎(以下S):マーシャルを意識したのはやっぱ「外タレのうしろに写っているアンプ」ってことかな?
Y:たとえば誰?
S:みんながみんなそうやったやん。ジミヘンもそうやし、ヴァン・ヘイレンももちろんマーシャルやったし、UFOもそうやね。逆にその当時マーシャルじゃないバンドで覚えているのは、ザ・フー、クイーン…(沈黙)…ほかあったかな?
Y:ツェッペリンはご覧になってるんでしたっけ?
S:イヤ、見てない。ディープ・パープルは見た。マーシャルやったね~。『マシン・ヘッド』のジャケットにも写とったし。
Shara_3 Y:やっぱりギターを始めてから意識が強くなった?
S:うん、そうやね。
Y:何歳くらいからギターを始めたんですか?
S:エーとね、中学の1年か2年かな。
Y:当然その頃はマーシャルなんて手に入るわけがないし…。
S:もちろん。アコースティックやったし。
Y:エレキを始めたのは?
S:自分で買ったのは…、高1やね。
Y:やっぱりマーシャルはあこがれの的でした?
S:あこがれたね~。
Y:この人がマーシャルだからマーシャル…なんて人はいました?
S:マイケル・シェンカーとヴァン・ヘイレンやね。
Y:ヴァン・ヘイレンが出てきたのはシャラさん何歳の時?
S:高3ぐらいやね。
Y:何かヴァン・ヘイレンの方がシャラさんより後に出てきたような感じがしてしょうがないんですよね~。
S:ヘヘヘ、イヤイヤ。
Y:それじゃ1959ですね。それでは、一番最初に経験したマーシャルは?いつごろ、どうやって?
S:高校2年の時かな?見知らぬ大学生とセッションすることがあって、その人がマーシャルを持ってたんよ。「やった!マーシャルが弾ける!」ってすごくうれしかった。その人が持ってたSGで弾いた。その時のマーシャルがメッチャ良かったんよね~!
Y:ヘェ~。でも、失礼ですが、そんなにギターがうまかった時期でもないでしょ?それでも良さがわかった?
S:イヤ~、うまかったねェ~!(爆笑)
Y:この質問はね、みんな初めて弾いたり買ったりしたマーシャルにガックリ来たっていうのが定番の答えなんですよ!おかしいな…。
S:(爆笑)だって、ホンマによかったんやもん!
Y:どういうふうによかったんですか?
S:カールコードでギターをつないでいたんやけど、スッゴイ歪むの。
Y:100Wだったのかな?その先輩の持ち物だったんですかね?
S:たぶん50Wやね。その先輩の持ち物で「コレ、使い」って弾かせてくれたの。それでギターも渡されて弾いたら、アァ~「あの音」なの!しっかも「こんなに弾きやすいの?!」って驚いた。
Shara_1 Y:エェェェェー?!
S:感動してね。いくらでも音が伸びるし、いくらでも弾けるし。でもう、アンプを買うならもうマーシャルって決心した。で、シェイカーがまだ二井ちゃん(二井原実氏:LOUDNESS、X.Y.Z.→A)とやってた頃、どこかの学園祭で…関大やったかな?野外のステージにマーシャルが置いてあって「これを使ってください」って言われて…18歳くらいの時かな。「素晴らしい!今日オレはまたスゴイ演奏をしてしまうのか!」って思った。
Y:どうでした?
S:それが!弾いたら音がもうペランペランで!(大爆笑)
Y:歪まなかったんだ!?
S:もうまったく歪まない!100Wだったんやね。でも音はデカかった!野外でも後ろからくる音圧に圧倒された。しかも、歪んでないからパキパキの音で…。
Y:歪みのペダルだってあったでしょうに?
S:もちろん、よく使ってたんやけど、その日はマーシャルがあるって聞いてたし、当然あの音が出るだろうからいらんやろと思ってペダルを持って行かへんかった。
Y:でもその思い出のマーシャルは70年代中盤くらいの製造でしょ?そのあたりのモデルがよく歪むなんて聞いたことないな。私もそれくらいの時期の1959を持ってて、ずいぶんライブハウスで使ったけどただの一回もアンプで歪んだことはなかったですよ。
S:ん~!、でもあれは強烈に歪んだよ。後になって探したけど見つからなかった。。友達のお姉ちゃんの友達が持ってたって聞いたんやけど。
Y:すごくよかったって幻のように思い込んでるだけなんじゃないですか?
S:イヤ、デビューしてすぐに探したんよ、「やっぱりあのマーシャルがいい」って。友達に電話しまくってね。
Y:で、結局そのマーシャルは手に入らなかったんですか?
S:そう。手に入らなかった。

はじめて手に入れたマーシャル

Y:それで、普通のものを入手したんですね?
S:友達で1959の3段積み持ってて使っていないのを知って…バイク・レーサーで宮城ヒカルって知らん?そいつが持ってて譲ってもらったん。3段で。
Y:UNIT3ですな?
S:そう!UNIT3やね!
Y:もうシェイカーが始まっていたんですか?
S:イヤ。デビュー前やね。19歳くらいの時やから。
Y:それじゃ、とにかくそれが初めてのマーシャルだったワケ?いきなり3段積みで。
Shara_6 S:そう。でもちょっと恐いんでそいつの家に試しに行ったの。大きい家やったんけど、「ここじゃ音は出せない」って弾かずに買ったんよ。
Y:ウワッ!ノンビリした時代だったんですね。私も2段積みを弾かずに譲ってもらったことがありました。だって、マーシャルならどれでもうれしかったんだもん!
S:そうそう!んで、自分の家に持って帰ってん。当然「コリャ、いっちょ弾いたらんとアカン」ゆうて自分の部屋に入れて、プラグインして「とりあえずはフルテンや!」って。もうノイズだけでも大きくて恐くなった。(爆笑)でも「何とかなるやろ、40Wのアンプをフルにしても大丈夫だったから」というのがあったから。んで、ドーンと弾いてやった!
Y:何が起った?まるっきり「バック・トゥ・ザ・フューチャー」じゃないですか?!
S:自分も思いっきりビックリして、汗がダーっと出てきて、「ダンダンダンダン」ってオカンが上がって来て。「アンタ!なにやっとんねんッ!!」て怒られた。「もうしません!!」って謝ったよ!(爆笑)
Y:でもみんなそういうのを経験していますよね!布団をかぶせて弾いたとか。
S:やるやろね~!
Y:シェイカーのデビューって何年でしたけ?
S:1983年。
Y:その頃大阪でのマーシャル事情ってどうでした?
S:結構使ってたよ。目立ってたバンドはみんなマーシャル使ってた。プロを目指しているバンドは例外なくマーシャルだったよ。

好きなマーシャル・サウンド

Y:目標としているマーシャルのサウンドってありますか?
S:ウン。ヴァン・ヘイレンのバッキングの音でマイケル・シェンカーのソロの音。
Y:ソロの時にワウ・ペダルをかませばいいんじゃない?
S:イヤ、ワウを使ってないマイケル・シェンカーの音が好きなの。初期のころね。『フォース・イット』とか。
Y:そういえばこのインタビューをメールでポール・ギルバートにした時、彼もUFOの『ライヴ(Stranger In The Night)』の音が好きだって言ってた。ってんでもう何十年ぶりかに聴きなおしてみたら、なるほどいい音でした。
S:…そうかナァ~?あれはあんまり…。
Y:なんか合わないナァ~。
S:合わへんネェ~。(大爆笑)いい音やけどあんまり好きやないんよ。
Y:じゃ、ま、『フォース・イット』が一番ということで。ヴァン・ヘイレンはファースト?
Shara_4 S:あれはビックリしたワ~。
Y:リッチーとかは?当然影響を受けた世代でしょ?
S:ウ~ン、『ライヴ・イン・ジャパン』のソロの音なんかはいいと思うけどバッキングがあかんのよ。
Y:バッキング重視なんですな?ロビン・トロワーなんかは?シャラさん、よく弾かれるじゃないですか?アレ、あんまり音がいいとは思えませんけど。
S:エエ~ッ?ウッソ~!
Y:何かこもっていて、もうちょっとスッキリしていた方がいいな。
S:ストラトであんだけ太い音出すヤツおらんで!
Y:トーンを絞りすぎのような。
S:ウン。かなり絞ってるね。
Y:ロビン・トロワーご覧になりました?
S:ウン。観たよ。
Y:どうでした?マーシャルでした?
S:マーシャルやったね。でもあんまりやったな。ベース(ジェイムズ・デュワー)が歌に専念して、新しいベースだったからかな?やっぱりあの「ライヴ」には勝てなかったね。
Y:あの『ライブ』はホントにカッコいい!でも、「I Can't Wait Much Longer」のイントロの音なんてこもってない?
S:こもってないて~!
Y:今日のインタビューはタフですわ!意見が全然合わない!
A:合わないね~!!(大爆笑)
Y:あと、マイナーですけど、我々の話題によく出るザル・クレミンソン(ザ・センセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンド→ナザレス)は?
S:あれSGの音なんだよね。メッチャ枯れたSGの音。
Y:いい音ですよね。ヴォイシングもカッコいいし。
S:ワウのプレイもいいんだよね~。
Y:ウマい人ですよね。別にあんな格好しなくてもいいと思うんだけど。今もあのバンドやってるんですよね。アレックス・ハーヴェイ抜きで(註:アレックス・ハーヴェイは1982年死去)。ザルはしっかりマーシャルを使っています。

こだわりのセッティング

Y:シャラさんはTSL100MF400Bを使われていますが、何かセッティングのこだわりってあります?例えばBASSは絶対フルとか…。
S:BASSはフルテンでDEEPスイッチは絶対押す!押さないとダメ!
Y:低域フェチ?
S:イヤ、そうでもない。押すとちょうどいいんだよね。
Y:シャラさんの音って厚いですよね。AVTを弾いても分厚い。その秘密はそこかな?
S:下がドンと来てほしいんだけどダブダブはイヤなんよ。
Y:やっぱりキャビの要素は大きい?
S:大きいね~。
Shara_2 Y:本当にシャラさんはMFキャビがお気に入りで…。今後たとえヘッドが変わったとしてもキャビはこのまま?
S:ウン。だってこれ以上のキャビはないからね。それくらいスゴイと思ってる。また、このスピーカーに余裕があって、なんていうかGREENBACKが耐えきれずに「助けて~!」って暴れてしまうのがカッコいいんだけど、コイツは涼しい顔しとる。ピタピタピタって音が背中にへばりつく感じがあって何やってもザッ!っと応えてくれるのがスゴイ。
Y:他は?MIDDLEを10にする人とかもいらっしゃいますよね。
S:アカンやろ~、それは。(笑)ミッドは音のレンジを決定する非常に微妙なところやからあれをプラスにするかマイナスにするかで聞こえ方がガラッと変わってくる。だから10にするとうまくないと思ってる。ミッドを上げると太く聞こえてソロなんか弾きやすくなるからね。でも。「太さ」ってちゃうところなんだよね。

マーシャルから離れる

Y:それでは、それほどお好きなマーシャルなのに離れていた次期がありましたね?それはどうして?
S:ディレイ音がきたなくなるのがイヤでね、センド・リターンが欲しかったんだよね。で、あるメーカーに遊びに行ったら色々とすすめられてね。「ああ、なるほどキレイになるな」って。
Y:その頃はセンド・リターンのついているマーシャルはなかったか…?
S:なかったんよ。レイブンから買った50Wにセンド・リターンをつけた。ダメだった。音が変わらないっというからやったんやけど、音が変わった。あのマーシャル好きやったのに!
Y:だから結局センド・リターンを求めてマーシャルから去ったワケね。
S:そう。でも、ラック式は音が細くてすぐにマーシャルに戻ろうとしたんよ。でもその時のローディが「今さらマーシャルもないでしょう!」って他の持ってきたんよ。こっちも「マーシャルやったらいい音で当たり前でつまらん」ってギタリスト特有の変な天の邪鬼根性が出てきて色々マーシャル以外のアンプを試してアレにしたの。それでずいぶんと使ったね。でも、練習スタジオなんかに行くとマーシャルが置いてあって弾いてみるじゃない?JCM2000が出てきたころ。そしたら「ナニこれ?こっちの方がメッチャ音ええやん!しかもマーシャルやし!」ってだんだんマーシャルに帰りたくなってきた。でもローディが変えさせてくれん。(笑)「何をいまさら!今のままで十分いい音ですよ!」ってね。その後のローディもその系統でマーシャルを使わせてくれん。でもどうしてもマーシャルが欲しくて秘密でここを紹介してもらったの!(爆笑)
Y:それでようやく帰ってくれたんですね。

弾いてみたいマーシャル

Y:それでは、「あのマーシャル弾いてみたい!」ってモデルはあります?伝説のでも、好きなアーティストのマーシャルでも。
S:僕の中の伝説のマーシャルは例の最初のマーシャルやね~。また弾きたい。
Y:あ、そうか!もしそのマーシャルにめぐり逢ったら「これだ!」って見分ける自信あります?
S:ン~、わかるかも知れない。あれほど歪むのはなかったから。いい音やったナァ~。
Y:ヴァン・ヘイレンがデビュー・アルバムで使ったマーシャルは弾いてみたい?
Shara_5 S:弾いてみたいね~。あと「フォース・イット」でシェンカーが使ったマーシャルも!
Y:やっぱり「レット・イット・ロール」?
S:最初のフィードバックにやられたネェ。アレ、おかしいよ。あんな音、今でも出んもん!あと録った日が違うんかな?いろいろな音が入ってる。
Y:「現象」は?
S:しっくり来ないな~。音が違うもん。
Y:合わないな~。「フォース・イット」を録るまでに何かあったのかな?
Y:ニューアルバム「Quarter」でもギターの音が分厚いですよね?これで本当にギターの音を重ねてないですね?TSL100とMF400Bにラインの音を混ぜてるとか。
S:そう。ソロも同じ。あとブースターを1個かましてたりする。

レコーディングとライブ

Y:レコーディングとステージで何かマーシャルのセッティングを変えていたりしますか?音量以外に。
S:僕はね、まったくいっしょ。絶対いっしょにしなきゃダメ。
Y:みなさんレコーディングではかなり爆音にできるけど、ステージではなかなかそうはいかないって。
S:逆にレコーディングでいい音になってるのに、どうしてそれをステージに持ち込まないの?って思う。
Y:でもやっぱりステージだとバランスの問題があって大きくできないことも多いでしょ?
S:ん~、でもレコーディングルームで音を大きくしすぎると部屋が飽和状態になっていい音じゃなくなると思う。せいぜい真中くらい?
Y:部屋が狭いでしょうからね?
S:イヤ、でっかい部屋でもダメ。僕はね、「遠い音」ってキライなんよね。「近い音が」好き。だからラインも混ぜるんやけどね。マイクを立てて直接マーシャルの音を録るんやけど、マーシャルの音ってすごく飛ぶから回ってきてそのマイクが音を拾っちゃう。被ってしまうんよ。だからマイクの後ろに毛布をかけてもらうんよ。
Y:あ、アレ跳ね返ってくる音を遮断してるんですか?
S:そう。あれが録音した時にものすごい差を生むんよ。ボケた感じがなくなる。オフマイクも大ッキライなんよ。だからそのまま持ち込んでライブと同じように録るんよね。
Y:ピッキングのニュアンスとか、レスポンスの速さとか、ダイナミック・レンジの広さ、アンプの性能としてのマーシャルってどんなものですか?
S:すべてにおいて100点満点やね!やっぱ練習した分だけそれが音に出るしね。そこはホントにスゴイと思うよ。ギターじゃなくてアンプだよね、その辺は。

今後について

Y:今後は1年に1枚くらいのペースでシェイカーのアルバムを出していく感じですか?
S:そうやね。
Y:その中でトライしてみたいマーシャルってありますか?
S:MODEFOURキャビは変わらんから、あれでVintageModernを試してみたいな。
Y:最後に若いギタリストたちに何かひとことアドバイスをお願いします。
Shara_7 S:やっぱりいいアンプを使わないとこの空気の振動ってわからないと思うよね。それで空気の振動こそがロックだと思う。それが音楽のおもしろさだしね。空気感っていうのは大事だよ。シミュレーターっていうのはいいものだし、これからも進歩していくんやろけど、使ううえでこの本物の空気感がわかっているかどうかが重要だと思う。それを知っているかどうかで音を作るうえでものすごい差が出るはずだよ。だから自分の音を作っておくという意味でアンプは絶対に自分のものを持っておくべきだし、格闘するべきだと思う。自分んアンプを使って人の音をマネするのもいいし、コピーするならそこまでやるべきだよ。そこまでやってはじめて本当にシミュレーターが使いこなせるんじゃないかな?まずはマーシャルを使って「本物」の音というものをしっかり身体に染み込ませてもらいたいな。

(2008年6月5日 弊社スタジオにて収録)