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2008年4月25日 (金)

橘高文彦(筋肉少女帯、X.Y.Z.→A)、マーシャルを語る

永遠のマーシャリストにして50ワッター、橘高さんのマーシャル・ロードショウからのトークを収録しました。当日はVintageModernの素晴らしいデモ演奏、マーシャルに対する橘高さんの熱い思いに加え大爆笑トークが炸裂。3時間近い長丁場となりましたが大いに盛り上がりました。以下はその抜粋です。

★橘高さんは当日VintageModern 2266と425A、さらに2203KKとMF280Bを使用しました。

マーシャルとの出会い

YMT(以下Y):マーシャルとの出会いと言えばどれくらいさかのぼるんですか?

橘高氏(以下K):ん~、小学校ですね。11歳のときかな?キッスではじめてマーシャルを知りました。76年が初来日。

Y:あ~、日曜日の昼の部に行きました。中学の時…。

Gt K:いいなぁ、オレは大阪の小学生、行かせてもらえなかった。それで、当時のキッスのレコードは見開きの紙ジャケ(当り前!)が多くて、その内ジャケにステージ写真が載っていたんです。

Y:「地獄のナントカ」ですな?

K:「ロック・ファイア」。それで、興味を持って「ミュージック・ライフ」なんかをよく見たりしたワケです。当時のキッスのステージというのは、ステージのドーンと階段が設置されていて、その後ろの上下に16台ずつキャビを置いていたんですよね。ちゃんとMarshallってロゴもついてて。カッコいいと思った。

Y:あの年は少し前にエアロスミスも初来日を果たしましたね。

K:エアロは通ってないんですよ。ボトルネックとか使っててちょっと土臭くて苦手だった。それよりも、いわゆる商業ロックが好きだった。チープ・トリック、キッス、クイーンが3大アイドルなんです。チープ・トリックもマーシャルでしたね。その頃から外タレというか、ロックに興味を持って…漠然とギターにも興味があって音楽雑誌をよくチェックしていました。その頃、好きだった人達がみんなマーシャルだったんですね。リッチー・ブラックモアしかり、マイケル・シェンカーしかり、スコーピオンズしかり…ステージのマーシャルの壁はキッスのトラウマです。

マーシャルを手に入れる

Y:キッスの後は? K:ギターに夢中になって、プロになろうと思って…アンプが欲しいじゃないですか?でも(VintageModernを指して)なかなかこんな大きいの 買えないじゃないですか?それで、好きな人達と同じ楽器を使っていい音が出なかったらダメだと思っていたんですね。で、高校生になってマーシャルを買ったんです。JCM800を。自宅のアパートに置きましてね…ボリュームを極小にしても音がデカイんですよ!つまり、「自宅でマーシャルを弾くな!」ってことですよ。

Y:音だけじゃなくて家に入れるとサイズもやたらとデカイですからね!

K:そうそう!それでオレはあまりエフェクターを使わないでしょう。せいぜいワウワウとオーバードライブくらい。これは好きだった人達の影響なんだけど、マーシャルを手に入れて、マーシャルとギターだけ諸先生方のようないい音が出せなかったらフィンガリングやピッキングがダメということなんだと思えるじゃないですか?

Y:イヤイヤ、それは最後にわかるんじゃないですか?

K:そんな!最後じゃ遅すぎるじゃないですか(爆笑)!

Y:それがわからないからいろんな機材を試すんですよ。

K:そうか!オレもナンダカンダで20個くらいコンパクト・エフェクターを買いましたよ!省いていって結局今の状態になった。でも、アンプはマーシャル以外使ったことないな。

Y:すると、いっちばん最初からJCM800だったんですか?

Kitsutaka_roadshow K:もちろん、その前に練習用の小さいアンプは持っていましたよ。本格的にライブハウスに出るようになってからはずっとそのJCM800す。悪い音がするワケがないと思っていますもん。これもいわゆる「ブランド」ってヤツかな。絶対にいい音が出るって信用していたからテクニックを磨くことに没頭できたと思う。マーシャルのおかげです。

ロック・コンサートのシンボル

Y:ありがとうございます。さっきの「積み」の話しになりますけど、マーシャルって一番安上がりでカッコいい舞台装置だと思いません?

K:オレが言ったらマズイと思って言わなかったけど、本当にそうだと思う。コンサートが始まる前に…たとえば緞帳の隙間からズラッと並んだマーシャルが見えると、いかにもこれからものすごい大音量のロックが始まるって感じがして興奮するじゃない?人間って音でも何でも大きなものに惹かれるんですよ。マーシャルはサイズも大きいし。まさにロックをシンボライズしてますよね。しかも、それをステージだけじゃなくてレコーディングでも使ってる。ソコなんですよ!

Y:って言いますと?

K:レコーディングはマーシャルでステージは違うって人はたくさん知ってるけど、ステージでマーシャルを使っている人は絶対にレコーディングでもマーシャルなんですよね。それぐらい色が強いんでしょうね。他のアンプを使って個性の強い音を出している人だと成り立たなくなっちゃうかもしれないな。

マーシャル歴

Y:それでそのJCM800の後は?

K:デビューしたのが80年代のヘビィメタル・ブームのころで…さっきもやってたライトハンド奏法とかね…そういう時代だったんです。ま、そういうのもいいんだけど当時はもうちょっとレイドバックした70年代後半くらいのギタリストが好きでそういう音を出したかったんです。それでオールド・マーシャルを探しにいったんです。自由が丘の…名前は忘れちゃったな。

Y:ビンテージ屋さん?

K:そう。もう筋少に入ることが決まってて、もうこのVは持ってた。ま、レコーディングもあるし、ツアーもあるしということで見に行ったんだと思うな。このVとオーバードライブを持っていって、片っ端からプラグインして買ったのが…何でしたっけ?

Y:1987。

K:そう。74年製。結局それがずっとメインですね。9割9分9厘使ってる。結構歪むんですよ。

Y:それと69年製ですね?

Kitsutaka_sunplaza2_2 K:そう、筋少に入って3~4年位経ってからスペアとして必要で手に入れたんです。JCMはずっとツアーなんかにも持って行ってるんだけど…いい意味でサ、マーシャルって気分屋じゃない?いくつも気分屋をそろえて選べるようにした方が面白いと思ったワケ。ですけど、1台ずつキャラクターが違って結局は69年の方は将来年をとってブルースかなんか演るにいい感じのマーシャルでした。

Y:いろいろなプロの方とお話すると結構マーシャルがその「気分屋」だとおっしゃるんですが、不思議と皆さんイヤがっていないで、むしろうれしそうにおっしゃるんですよね。

K:ギタリストは基本的にMなんですよ!さもなきゃ、こんなに練習なんかしませんって!

Y:かのジミ・ヘンドリックスもこう言っているんですよ。「マーシャルは最高だ。ちゃんと動きさえすれば」って。

VintageModernについて

Y:特に橘高さんのようにビンテージの機材をお使いになっているとメンテが大変ですよね?

K:やっぱりメンテだけは欠かせませんね。幸い俺には優秀なテクがいるから事なきを得ていますが。

Y:その扱いに気を遣わざるを得ないビンテージですが、このVintageModernでしたら代えが利くののではないか、とあるギター雑誌のインタビューでおっしゃられていましたが。

K:どこのメーカーでも当然の変化に合わせた商品を出してくるというのは当然のことだと思うんですよ。マーシャルにしてもチャンネルが複数あっていろんな音を出すモデルとかね。でも、ここへきて俺のビンテージのような古式ゆかしいアンプを作ったというのが素晴らしいよな~。

Y:一番のカギはパワー管にKT66を使っていることなんですね。そして、設計した男がスティーヴ・ドーソンといって元アニマルズのギタリストだったんです。ゴチャゴチャと色んな機能を詰め込むんではなくて、本当に指で音を作ることができるアンプ。それに必要最小限な機能、例えばリバーブとかループとかを搭載したモデルというのが開発コンセプトなんですね。

K:本当にそうですね。さっきの演奏を聴いてもらえばわかると思うけど、普段の俺の音をほとんど変わりがないでしょ?リバーブが付いてるのがうれしくて…ガンガン入れちゃった。(実演)ノイズもさすがにビンテージよりは小さいし、EQも利きがいいし。やっぱり、ビンテージだとメンテが大変ですから、このようなモデルというのはビンテージ・サウンドを狙っているアマチュアの方には最適ですよね。この最初からリンクされているというアイデアと機能も便利でますますビンテージに近づけるようになっていますよ。

手元でつくられるトーン

Y:それからギターのボリュームを変えて異なったトーンを出すのも得意なんです。

Kitsutaka_wall_side K:そう。ギターのボリュームで歪みを調節できるというのも俺がマーシャルを好きな理由のひとつなんですよ。(実演)これができるのはマーシャルだけなんですよ!俺のライブを見てくれる人にはわかると思うんだけど、(実演:ボリュームを徐々に上げてクリーンからディストーションまでを連続で出す)こうやって、頂点にたどり着くまでつながっていたいじゃん?!チャンネルを変えるアンプだとこうはいかないもんね。これが色気がないと昔から思ってた。

Y:なるほどね。

K:それとピッキングの強弱で音を劇的に変えられるというのがマーシャルのいいところなんだけど……ムズカシイところでもあるワケよ。色気を出したいと思ったらやっぱりマーシャルだよね。そうでないギタリストはどのアンプでもいいんじゃないかな?

Y:そのピッキングの強弱でどれくらい音が変わるのかもちょっと見せていただけますか?

K:んじゃ、ボリュームには触らないで弾くからね。(実演)ホラね、こんなに音が変わる。

Y:模範を絵に描いたような演奏ですね!ピッキングする位置でも音が変わりますからね。まさに、ジミの時代から受け継がれてきた要素なんすね。

K:俺はリッチーで気が付いたの。(実演)

Y:橘高さんはオーバードライブ・ペダルをものすごく薄くかけているんですね?

K:EQみたいに使っているんです。ローを出してやって80年代メタルっぽいサウンドにしてる。(実演)歪みを足しているワケではない。(実演)

マーシャルに対する思い

K:でもさ、プロになってね、こうやってマーシャルにサポートしてもらってね、例えば俺がF1のレーサーでフェラーリのチームに入りたいんだけど、違うチームに入っちゃうなんてことがあるワケじゃない?マーシャルが好きでズ~とやってきて、今こうしてマーシャルとタッグを組めていることがメチャクチャ幸せなんですよ。

Y:マーシャル・ファミリーね!

K:ファミリーかぁ!(笑)

100Wと50W

Y:橘高さんは50W派ですよね?なぜ50W?

K:んマーシャルを初めて買いに行ったときにお店に100Wと50Wがあったんです。たいていみんな100Wですよね?でも試してみると100Wは音圧がありすぎるというか、コントロールできない感じがしたんです。こりゃマーシャルって大変だと思ったんです。で、次に50Wを試したところ家で練習しているような…いい意味でトランジスタ・アンプのような使いやすさがあったのと、いつも言うんだけど、歪みの粒子…それは、耳にも聞こえないし目にも見えないんだけど、細か~い成分がきれいに並んでいる感じがしたのね。100Wはその粒子が大きいの。男らしいんだけど、俺にはパワフルすぎたんです。その後も100Wを使う機会もあったけど、やっぱり100Wは100Wだね。前にグンと出てくるし、そこへ行くと50Wは引っ込んでる。そこがまた「哀愁」でいいんですよ。

Y:マイケル・シェンカーお好きですよね。あの人はJCM800 2205という2チャンネルの50Wを愛用していますが、その影響は?

K:もちろんありますよ。ソロになってからはこもった感じがですけど…プロデューサーの影響かな?…UFOの時はカラっとしててまさにああいう音ですよね。

Y:ポール・ギルバートも50W、イングヴェイもそうだ。もっと大物がいますよ、50Wの。

K:誰、誰?

Y:ジェフ・ベック。DSL50を使ってくれています。Bキャビネットしか使わない。

K:そうなんだ!

100Wと50Wの弾きくらべ

Y:橘高さん、せっかくここに100Wの2466もあることですし、実際に弾き比べてみましょうよ!セッティングは2266と同じにしてあります。

K:よっしゃ。(実演)

Y:どうですか?

Photo K:同じギタリストで同じアンプを弾いているわけだからそれほど音は違わないはず。でもね、弾いている方はすごく違いを感じるの。音的には50Wより太い感じがしません?弦が太くなったような感じもする。ほかのシリーズに比べてVintageModernは100Wでも扱いやすい感じがするかな。ノイズも昔のマーシャルに比べると格段に少ないね。俺、マーシャル・ノイズ大好きなんだけどね。いつかアメリカでレコーディングした時、向こうのエンジニアがブレイクで聞こえるマーシャル・ノイズを消そうとすんのよ。俺にとってはあの「シャー」が大切なの。あれがないとさびしくってダメなの。

ケリー・キング 2203KK

Y:じゃ、橘高さん、「シャー」がないヤツいってみましょう。まずはこのモデルの最大の特徴のザ・ビーストをオフにした状態。

K:(2203KKを実演)実はレコーディングでクリーンの音が欲しいときはJCM800を使っているのね。芯のあるクリーンなの。全部の帯域がまっすぐ出てくる感じ。これはあれ系のサウンドを感じますね。

Y:じゃ、今度はザ・ビーストを入れてケリーのサウンドにしてみましょう。

K:(実演:無信号じにまったくノイズが出ない)すごい!すごいけど俺のミュートはどうしてくれるんだ?(爆笑)オーバードライブもまったく要らないね。

Y:センド&リターンも付いてないんですよ。今時のアンプで。

K:俺、ただの一回も使ったことないけどね。こういう特化したものがいいんですよ!これもケリー・キングの人生に特化しているワケだ!

あこがれの音

Y:「この音を出してみたい!」というようなギタリストって誰かいます?

K:ん~、直結のサウンドということであれば、やっぱり76~77年くらいのキッスのおとかな。すごくロックな音だと思う。あと、UFOの「現象」のマイケル・シェンカーの音。俺はわりと昔から「自分の音」を作ろうと切磋琢磨してきたつもりなんだけど、ああ、あの音はいいなって最近思ったのはザック・ワイルド。ウォームでいいな。ランディ・ローズも好き。やっぱり直結のサウンドというものは何ものにも代えがたいと思うし、いい時代にマーシャルと出会うことができて幸せと思っています!

★マーシャル・ロードショウはデモンストレーションの他、このようにアーティストのトークも中心にお送りしています。